(子路第十三)
子夏(しか)莒父(きょほ)の宰(さい)となりて政(まつりごと)を問う。子曰わく、速(すみや)かならんこと毋(な)かれ。小利(しょうり)を見ること毋(な)かれ。速(すみや)かならんと欲(ほっ)すれば則(すなわ)ち達(たっ)せず。小利(しょうり)を見れば則ち大事(だいじ)成(な)らず。
【訳】
子夏が莒父の代官になって、政治の要道を尋ねた。
先師が言われた。
「速やかに成果を挙げようと思うな。目先の利にとらわれるな。 無理に速くしようと思えば、目標には到達できない。目先の利にとらわれると、大きなことは完成しないよ」
*最近のことであるが、ある業績の甚だよい旧知の社長が思い切って四十を少し過ぎた長男に社長職を譲った。任された新社長は日々真剣に取り組みながら業績は意の如くあがらず、次第に不安に駆られて焦燥し、遂に私の所まで訪ねて来た。そこで、私はこの章を示して解説を加えた。彼はようやく平静を取り戻して帰っていっ た。二千数百年前の先人の遺言が現状に生きるが、所謂(いわゆる)古典の妙味というべきである。
莒父は魯の町の名。
<論語が醸すコーチング>
【速かならんと欲すること毋かれ】速やかに成果を挙げようと思うと、大志を遂げることができないので、コーチはクライアントの信念やあり方を問いかけて、大志を意識した行動が執れるようサポートしている。