(子路第十三)
葉公(しょうこう)、孔子に語りて曰わく、吾(わ)が党(とう)に直躬(ちょくきゅう)なる者有り。其の父、羊(ひつじ)を攘(ぬす)みて、子之(これ)を證(しょう)す。孔子曰わく、吾(わ)が党の直(なお)き者は是に異(こと)なり。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きこと其(そ)の中に在(あ)り。
【訳】
葉公が孔子に世間話をして言った。
「私の村に正直者と評判のある躬という者 がおります。彼の父が羊を盗んだのを訴え出て、証人となりました」
先師が言われた。
「私のほうの村の正直者は少し違います。父は子のために隠し、子は父のために隠します。このように隠し合う中に、人情を偽らない本当の正直があると考えます」
*万物は流転してやまないが、その中に必ず不易のルールが一貫している。これを真理とか道理という。法理というのは法治国家に於ては必ず 守るべきものであるが、人の合議によって作られたものであるから絶対に不変といえず、時に変化することもある。法律が絶対として密告を認めると間違いはないとしても、それが疑心暗鬼の殺伐たる社会を招く本になる。そこで孔子は情理に従う方を正直とされたのである。
<論語が醸すコーチング>
【直きこと其の中に在り】相手を思いやる心の中に人情を偽らない本当の正直があるので、コーチはクライアントの話をよく聴き、行動を見守り、感じたことを伝えて、自らの心に忠実な行動を執れるようサポートしている。