dippin' (BlueNote) / Hank Mobley
ひいきにしているプロ野球チームで数年前に新人王を取ったある投手は勝てなくなってくると
何を焦ったのか、
まだ20代半ばだというのに最大の武器である剛速球を捨てて技巧派に転じてしまった。
僕は予言者ではないけれど、
特に野球に興味のない家内に向かい、声を荒げてこの投手の行く末を案じた事がある。
怪我でも老いたわけでもないのに自らの個性を殺した生き方の選択に我慢ならなかったわけだが、
事実転向一年目は目先が変わった打者の戸惑いからか12勝をあげる活躍をしたが、慣れられると
以降みるみる衰退して忘れ去られ、最近になってトレードで放りさだれた事をニュースで知った。
隆盛を極めたモブリイやモーガンが60年代中期以降も時代に翻弄されず、
4ビートの演奏に明け暮れることなど無理な相談だということは重々承知しているが、
なにもボサノバはないだろうにと、2曲目を聴くたびに僕は腕を組んで思案に暮れる。
『あの頃のままでよかったのに』
無責任ではあるけれど、純粋なハードバップを愛する僕には、ブルーノートで言えば
このあたり以降になってビートが8になるとジャズに対する愛情が正直言って少しだけ薄れる。
人気盤ではあるし、B面の『I See Your Face Before Me』が大好きでオリジナルまで買ったけど、
素直に聴くことのできない天の邪鬼な自分が、確実に存在しているのだ。
Midnight Blue (Bluenote) / Kenny Burrell
世界一アーシー(だと思う)なテナー奏者タレンタインを迎えた本アルバムの冒頭曲は、
脂ぎった土臭い汗の匂いに満ち溢れている。
何の本だったか失念したがこのアルバムの事を、
『タイトルのMidnightから連想される街並みは青山や表参道ではなく、新宿歌舞伎町の喧騒のそれだ!』
とか、そんな内容で紹介していて大笑いしたことがある。
わかりやすく言えば、
フーテンの寅さんの『まくら~、さくら取ってくれ!』ではなく、
仁義なき戦いの
『殺るんなら今ここ
そんな感じか。
RVGオリジナルではさらにネットリとオイリーさが増幅されて暑苦しく、とても真夏には聴けません。
今ですよ、いま。(笑)


