カーテンを揺らす穏やかな風を見て
ふと はるの事を思い出す

僕の中のはるはとても穏やかだ
何もかもがゆっくりと流れて
僕はそれに身を任せている
実に居心地がいい

はるは突然やってきて
いつのまにか僕を包み込んでいる

はるは孤独な僕を暖かく迎える
独りっきりの僕を受け入れる
ただ ぼんやりとそこに座る
ただ ぼんやりと空を見上げる

はるが去っていく
僕の前から少しずつ遠ざかっていく

少しずつ距離が広くなって
いつのまにかいなくなってしまう
すると 僕は独りっきりじゃなくっている
共に生きる仲間が ほら

また はるはやってくるだろうか
仲間のいる僕のもとへ



四季を読む詩人に44のお題
「Colorful Box」 http://pucchi.net/sachimi/
朝が来るまで語り合った僕ら
偶然であったあいつと話したよね
酒に弱いのに 君と僕といったら
真っ赤になって笑っていたよね

鉄壁の壁を持っていた僕は
自分の殻の中に閉じ篭ってた
ひょっこり顔を出しては
誰かが近寄れば サッと身を隠してた

下手くそで単調なリズムを
君は僕の前で静かに奏でていた
知り合いに借りたんだって
うれしそうに笑いながら

君が僕を誘ったバンドで
僕は歌を歌うことになっていた
聞いたこともないアーティストの
マイナーなアルバムの曲を

僕らのバンドのメンバー
みんな音楽初心者で
周りに溶け込めない奴ばかり
君が中心の即席バンドだった

本番当日に僕は風邪をひいてしまって
声がボロボロでどうしようもなかった
歌詞もうろ覚えで自信がなかった
そんな時に君は言ったよね
゛間違えてもいいから思いっきり歌っていいよ″
ってね

その言葉で僕は思いっきり歌えた
声も心から叫ぶ事ができたんだ
演奏も途切れ途切れだったけど
そのときの僕らのそれがすべてだった

その後 僕と君はサークルを辞めた
それぞれ違う理由があったんだ
こうして 僕らは別々の道を歩くことになった
それっきり会うこともなくなった


たった一度だけ 駅で会うことがあった
改札を抜けた所で僕の肩を掴んだ君
久しぶりだねって君は言った
そうだねと僕は言ってじゃあねと別れた

あの時 君は僕に何を言いたかったんだろう
今になって僕はそんなことを考えている
冷たい風が僕を通り抜けていった
身体中を運び去るように
それでいて 包み込むように

冬という季節がやってくる
台風のような夏が過ぎ
駆け足な秋を飛び越え
それぞれの足並みで時を刻んで

時は人によって歩みが違う
誰かにとってゆっくりとした夏でも
僕には台風のようであった
誰かにとって今が秋でも
僕にはもう冬が顔を見せている

今 この時を生きることに
微妙なずれが生じている
それは決定的なずれではなく
ほんの些細な 決定的なものではない

人それぞれの1日があるように
季節もまた 人それぞれの顔がある
忘れられない夏があるように
忘れてしまう夏がある

僕は忘れてしまうのだろうか
たった一つのこの季節を
君と過ごした季節の変わり目を

覚えているかな
君はたった一つのこの季節を
僕と過ごしたあの時のことを

覚えていたら教えてくれないか?
この愚かで嘘つきな僕の為に
あの言葉を嘘にしない為に

最初で最後のあの季節のことを…