無くしてきたたくさんのものを
思い浮かべることも困難で
それを掴むことができたなら
簡単に夢なんか叶うんじゃないかって

どんなに誰かのことを好きになっても
自分の思っていることを口にしないと伝わらない
遠まわしのアプローチなんて
何回飲んでもまずく感じるビールみたいだ

大好きな言葉をメロディーにのせて
大好きな絵にストーリを添えて
大嫌いな空に大声で叫んで
どうでもいい清涼飲料水を飲み込む

言葉運びが好きな作家の
とても暖かいストーリーを読んでも
暖かい眠りから覚めた時の動き出した時間
その不快感に勝る想像を生み出すことができない

縛り括られた雑誌の
ボディに食い込むその姿を
すごくセクシーだなんて感じる
僕の身体に目視できる傷は存在しない

仕事中に気になることは
無くしてしまったカッターの行方
応対する客の僕に対する本当の声
目の前で流れる懐かしい曲のドキュメント

トーテムポールが遠くを見ている
その視線がどこに向けられているのか僕は知らない

トーテムポールってどんな奴だっけと
僕はなぜか突然思った

それっぽいものを見たのは
中学生の頃、正門の近くだ
あと、修学旅行で行った北海道にあるアイヌ博物館
髭を生やしたおっさんが遠くを見ていた気がする
いや、あれはこけしだったのかもしれない

確か、奴(トーテム)は一本の木が原料だった気がする
空へと伸びる木が形を変えて
おっさんだとか何処かの民族の守り神になっている(ような気がする)

そうだ、僕はトーテムポールな気分なのかもしれない
誰かを守るという使命を忘れて遠くを見ている
その遠くがどこだかわからないのだけど

奴は何もする気がないのだろう
いろんな人に崇められて神にされているけれど
本人にはそんな自覚がないんだろう
だから、近くに目を向けずに遠くを見ているんだ

そう、僕はなんでも見過ごしてしまうんだ
誰かの気持ちや自分の好きなこととかうまい話し方を
何がそうさせてしまったのだろうと原因を探るけど
見つかるわけないじゃない、きっとどこかで諦めてる

夜の闇が僕の眼を覆っているんだとか
太陽の光が僕を盲目にさせるだとか
自分の無能さを美化しているだけなのさ

いろんな出来事をただ見て過ごすだけ
有害、無害とも言える役立たずなのさ
空を照らすサーチライトが
暗闇の中に吸い込まれる

空に伸びていく光の筋が
少しずつ薄まっていく

バイトの帰り道
赤信号を焦点を合わせる

吐き出される白い息に
青白い煙が含まれる

横に並んだサラリーマンが
無言の非難を視線で送る

寒空の下で思うは
遠かりし春の到来