ジャンル:悪党が主役の犯罪映画
製作国:フランス
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
愛するポイント:裏社会に生きる者同士の危うく切ない関係
ジャン=ピエール・メルヴィルがアラン・ドロンと組んだ作品は3作あり、中でも「サムライ」の人気が高いですが、僕の推しは「仁義」です。
日本の武士にインスパイアされたと思われる「サムライ」(原題もLe Samourai)の好評を受けた邦題だと思いますが、原題は「赤い輪」(Le Cercle Rouge)。
東洋的な運命論的"因縁"で結ばれた5人の男の物語なのですが、そのつもりで観ると登場人物の互いに対する気の使いように"仁義"を感じる部分がないでもなく、それなりに上手くつけた邦題と言えるでしょうか。
その5人のキャラクターと関係性がずばりこの映画の魅力となっています。
特に主役のドロンに対する助演的な位置づけではありますが、イタリアの名優ジャン=マリア・ヴォロンテ(※)、フランスの大物歌手および俳優であるイヴ・モンタン、やはりフランスではコメディ映画の人気ものブールヴィルが3人3様の印象的なキャラクターを好演。ドロンが孤軍奮闘した「サムライ」に比べ厚みのあるストーリー展開になりました。
もちろんドロンが食われっぱなしというわけではなく、むしろ彼ら3人の芸達者に見せ場を譲りつつ要所を締めて動じない二枚目としての役割をきっちり果たしています。
と言えばファンのひいき目に聞こえるかもしれませんが、もし別の誰かが3人に負けじと演じていたらまとまりがつかなかっただろう、と思うとやはりこれはドロンという大スターの至芸ではないでしょうか。そのあたり、「アラン・ドロンふたたび」と題する記事にも書いておりますのでよろしければお読みください。
以上の4人に加わる5人目が「サムライ」でドロンを追い詰める刑事役を好演したフランソワ・ぺリエ。
出番も多くはなく役柄的にも見せ場が少なめなのですが、本作がフランスでのヒットに関わらず日本での受けが悪く20分近く短縮されて公開されたそうなので(by Wikipedia)、本当はもう少し見せ場があったのかもしれません。
そうだとしても冒頭からラストまで見どころは十分。
ラブロマンスは一切なく、メルヴィルお得意の細部まで丁寧に描かれたかなり硬派な感じの仕上がりですが、以前紹介した「いぬ」にも似て、暗黒街(とその周辺)に生きる者(本作の場合はたまたま男ばかりですが)の命がけの危うく切ない関係が胸に沁みる作品です。
※公開時のパンフレット(写真)ではヴォロンテの扱いが小さめなのが時代を感じさせます。