#15 いぬ Le Doulos (1963) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:悪党が主役の犯罪映画
製作国:フランス
監督:ジャン=ピエール・メルヴィル
愛するポイント:裏社会を活写する光と影の精緻な演出とハンサムなベルモンド

 

ジャン=ピエール・メルヴィルはまずアラン・ドロンの「サムライ」で知り、「仁義」(3つ☆)を観てファンになり、「リスボン特急」からさかのぼって「恐るべき子供たち」「影の軍隊」(3つ☆)と観ていきましたが、本作はなかなか観られずようやく最近、「ギャング」は未だに観られていません。熱狂的なファンがいるかと思えば、観たことがない映画ファンも多いことでしょう。73年に55歳という若さで亡くなったことも一要因かもしれません。

光のあたらない世界を描くだけに、光と影の使い方が秀逸ですが、特に感銘を受けたのは描写の丁寧さ。登場人物の動きをカメラが丁寧に拾っていく演出のよどみのなさ印象的ですが、最近メルヴィルに限らずフランス映画のひとつの特徴なのかと考えるようになりました。「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネがファンタスティックな描写でディテールを見せるのも同じ線上にあるように感じます。

主役のジャン=ポール・ベルモンドは「勝手にしやがれ」でスターの仲間入りをした後の作品ですが、ヒット作「リオの男」(未見)以降の彼の印象が強かった自分にとっては、「ベルモンドってこんなに繊細な感じのハンサムだったか」と衝撃でした。

その後「墓場なき野郎ども」や「勝負をつけろ」でそれを再確認しましたが、日本でのドロン人気のわりにフランスではベルモンドの人気がまさっていたように言われた理由がわかった気がしました。

現実のギャングがどうなのか知りませんが、フランスのギャング映画はアメリカのそれに比べ「組織同士の争い」感が薄く、個人と個人の(友情といってもいい)つながりと確執が前面にでているのが特徴のようです。ジョゼ・ジョヴァンニのようなもと本職のギャングスターのような人物が製作に参加しているからかもしれません。市民が市民として生活しながら武器をとって闘ったレジスタンスの経験も影響しているかもしれません。
それだけに日本の任侠物のような味もありながら、マフィア、極道、やくざ、暴力団の掟や風習に縛られないはみ出し者たちの哀歌が胸にしみるように思います。