【ネタバレ】ブレイブワン The Brave One (2007) ☆ | 映画の楽しさ2300通り

映画の楽しさ2300通り

ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

※この記事では盛大にネタバレしていますので、未見で今後観る可能性がある方は読まないことをおすすめします。

主演を務めたジョディ・フォスターが製作にも関与した力の入った作品、という認識でした。実は1度観ようとしたのですが、DVDの録画不良で序盤しか観られず、数年を経てからの再見となった作品です。

自警団(Vigilante)的な活動による私刑の是非が問われる内容で、チャールズ・ブロンソンの人気シリーズの第1作「狼よさらば」の女性版といった感じ。ただ前例がある割にはそれ以上の問題提起ができたとは感じられませんでした。

エリカ(フォスター)による殺人のほとんどは、正当防衛によるものと言えば言え、婚約者を殺し自分に大けがを負わせた張本人たちとクライマックスで対峙する展開は「復讐劇」と見えるため、自分とは直接的には関係のない悪を裁くという印象が弱く、「狼よさらば」のように悪党を探して街を歩く、という異常さは薄まっています。
唯一、心から打ち解けた刑事(テレンス・ハワード)の仇敵を、どうしても尻尾をつかめず罰することのできない彼の代わりに殺害する行為は、超法規的なふるまいでしたが、どちらかというと(小さいので)非力に見えるエリカが、常日頃から暴力をふるうことをいとわない男性を拳銃ではなくバールで殺害(結果的には墜落死)するという展開に、若干無理を感じてしまいました。

特に気になったのは、エリカが殺害する悪党たちは(最初の一人を除いて)銃器で武装しておらず、であれば一個人の拳銃による制圧が暴力に対して有効であるように描かれていることです。現実には訓練を積んだ兵士や警官でも難しいことを、ほぼ素人だった(銃を持った以降もほとんど訓練はしていない)彼女がやすやすと成し遂げるところに、NRA(全米ライフル協会)が喧伝する銃信仰を見た気がしました。
暴力が蔓延する原因には貧困や教育、行政など様々な問題があるわけで、「合法的」な暴力であれ本来あるべきではありません。「シェーン」や「真昼の決闘」は、西部開拓時代はともあれ現代では「バットマン」同様ファンタジーでしかない、ということは肝に銘じるべきかと思います。

ジョディ・フォスターは好きな俳優で、演技もよかったです(テレンス・ハワードも)し、ニール・ジョーダン(「クライングゲーム」「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」)の抑えた感じの演出も好感が持てましたが、内容的に☆2つ以上はつけられない作品でした。

 

※ジョディ・フォスターについて、よろしければこちらもご覧ください