#95 ザ・ドライバー The Driver (1978) | 映画の楽しさ2300通り

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ジャンル:悪党が主役の犯罪映画
製作国:アメリカ
監督:ウォルター・ヒル
愛するポイント:キャラ立ち優先のシンプルな構成で魅せる犯罪アクション映画の快作

 



悪党・悪漢が活躍する映画は倫理的な問題はあるものの、おのれのためにのみギリギリの状況下で素早く的確な判断と行動で活路を見出していく姿には魅力を感じます。
48時間」シリーズで知られるウォルター・ヒルが監督デビュー2作目で撮った「ザ・ドライバー」はそんな悪党の孤独な戦いをシンプルな構成とセリフを抑えたアクションで魅せました。

主役の"ゲッタウェイ・ドライバー"(犯罪に使われる逃走用車両の運転手。高度な運転テクが要求される)通称"カウボーイ"を演じるのが「ある愛の詩」(1970)のライアン・オニール
娘のテータム・オニールと共演した「ペーパー・ムーン」(1973)など、甘いマスクを活かした比較的ソフトな好青年風の役柄が得意な俳優だと思っていましたが、「バリー・リンドン」(1975)でみせた冷酷な面をそのままにポーカーフェイスの冷徹な犯罪者を好演。彼の作品をすべて観たわけではありませんが、かなり異色な役作りだったように感じました。

対する追手役"ザ・ディティクティブ"を演じるのはブルース・ダーン
11人のカウボーイ」(1972)でジョン・ウェインを射殺(しかも背後から)した数少ない役者として知られるなど長いこと脇役・助演を演じてきましたが、「サイレント・ランニング」(1972)、「ファミリー・プロット」(1976)などで主役を務め、カーク・ダグラスと共演した「明日なき追撃」(1975)では主役スターのダグラスを食い、本作と同年に公開されたジェーン・フォンダ主演の「帰郷」(1978)では助演ながらオスカー、ゴールデングローブの両賞にノミネートされるなど、頭角を現してきた時期。難しい役柄の解釈が不要そう(個人の感想です)なキャラを気持ちよさそうに演じています。

"カウボーイ"と行動を共にする"ザ・プレイヤー"を演じたのは、多分これがハリウッドデビューのイザベラ・アジャーニ

僕のようなアジャーニファンからすると、彼女の実力が出し切れていないキャラクターだと思いますが、雰囲気と印象の強さだけをとればこれはこれで好配役なのかもしれません。ただこの後あまり米映画に出演していないところをみると、やはり本人にとっては役不足感があったか、とはファンの勘繰りでしょうか。

そのほかには「ナッシュビル」(1975)で人気カントリー・シンガーを演じたロニー・ブレイクリーがカウボーイの連絡役"ザ・コネクション"を好演。以上のような登場人物たちの役名からも想像がつくように、全体に人間性の掘り下げなどを排し、徹底してシンプルなキャラクター造形と役割分担でみせるストーリーが、観る側が倫理的な葛藤を感じる暇も意義もなくひたすらハラハラドキドキの爽快感を伴って展開していきます。

ストリートファイター」(1975)や「ウォリアーズ」(1979)のウォルター・ヒル監督らしい、派手ながらもリアルさを感じるアクションが、ストーリーよりキャラクターを優先しつつコミックっぽくならないタフでハードな渋さを醸成した、犯罪映画の快作です。

 

※ブルース・”ザ・ディティクティブ”・ダーンとイザベル・"ザ・プレイヤー"・アジャーニ。
 

ブロトピ:2024/05/02