#92 殺人狂時代 (1967) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:悪党犯罪
製作国:日本
監督:岡本喜八
愛するポイント:仲代達也のおとぼけぶりが楽しい岡本喜八節全開の快(怪)作!

 



岡本喜八は好きな監督の一人で、本作の他、「座頭市と用心棒」が愛する映画ですが、そのほかにも「独立愚連隊」シリーズ、「肉弾」、「吶喊」など大好きな作品があります。
但し、これらは中国戦線や太平洋戦争、戊辰戦争を舞台にした作品であるため戦争の悲惨さが先に立ってしまい、なかなか愛するレベルに至っていません。喜八は「『戦争批判・明治維新批判』をライフワークとして掲げ続けた」(Wikipediaより)そうなので、いきおい作品自体が暗いトーンになることが多かったのかもしれません。
一方では「ああ爆弾」や「大誘拐 RAINBOW KIDS」、「East Meets West」などの娯楽作品も多く、個人的には本作や「座頭市・・・」を含むそれらが気軽に観られて好きです。

殺人狂時代」はチャップリン作品とはまったく関係なく(そりゃ原題はまったく違いますしね)、「ブレット・トレイン」などと同様、プロフェッショナルな殺し屋(コントラクトキラー)同士の闘いをテーマにした作品。
僕はこのテーマがかなり好きで、このブログでも「【ブレット・トレイン公開記念!】殺し屋vs.殺し屋拾遺」などという記事まで挙げており、邦画ではギャビン・ライアルの「深夜プラスワン」のパクリ疑惑がある鈴木清順の「殺しの烙印」を紹介しています。
ただ清順にしろ喜八にしろ、アクションシーンの撮影が得意というわけではなく(個人の感想ですが)、むしろ危険な雰囲気やおどろおどろしさといったアクションにまつわる副次的な要素(はらはらどきどきとも言います)を丁寧に描くことで、派手なアクションを見るときにつきものの肉体的な緊張を強いることなく、ある種の"気楽さ"を醸し出しているように思います。

ただ戦争も食糧難も高度経済成長も経験してきたタフな人らしい悪趣味と言うか、うへ~と思う汚らしい演出が随所にあり(ほかの作品でも)、ソフィスティケイトされたいまどきの観客には拒絶反応があるかも、などといらぬ心配をしてしまいます。
そんな汚らしさもある主人公を演じるのが仲代達也三船敏郎同様日本を代表する役者のひとりでありながら、彼の主演作品で愛する映画に入っているのはこれ1本(※)というくらい苦手な俳優なのは、いつもやけに気取って堅苦しい芝居をしてるから。なのでどちらかと言えば三船に斬られる役(「用心棒」とか「椿三十郎」とか)がちょうどいいと思っているのですが、こうした気の抜けた側面のあるキャラはわりと似合いなんだなと思いました。

さらに好演だと思ったのはヒロインの団令子。率直に言って本作が大好き(2つ☆)を超えて愛する映画(3つ☆)になったのは彼女の魅力によるものです。
「ブレット・トレイン」が荒唐無稽ながらまずまず楽しめたのは、殺し屋たちによる殺し合い大会の元祖を観て愛してしまったからに違いありません。

 

※主演ではなく脇に回った「椿三十郎」は愛する映画です。

 

ブロトピ:2024/03/7