【ブレット・トレイン公開記念!】殺し屋vs.殺し屋拾遺 | 映画の楽しさ2300通り

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どちらかと言うと映画よりドラマの方が好きな相棒が、珍しく「"ブレット・トレイン"が面白そうだから観てみたい、映画館じゃなくてもいいので」と言ってきました。
ブラピは好きなので望むところですが、この際なので同じく殺し屋同士の闘いを描いた作品をおさらいしておこうと思います。

と、その前に「殺し屋」について。基本的に殺し屋とは、金または信条のために、他人の指示によって人を殺めることを生業とする人物を差します。
始皇帝暗殺」の荊軻などはそのはしりと言えそうですが、彼の場合は刺客といった方がしっくり来そうですね。
わかりやすいのは「ゴルゴ13」や「必殺仕事人」のような金をもらって人を殺すタイプですが、「ロード・トゥ・パーディション」のトム・ハンクスのように組織のため、あるいは「ダ・ヴィンチ・コード」のポール・ベタニーのように信条に基づくケースもあります。

いずれにしても違法な専業にいそしむ影の存在であり、命じられて仕事をするくらい自我が弱めなので自らが命を狙われることはあまりないためか、殺し屋が登場する映画が数あるなかでも、殺し屋同士がガチで闘う作品はそれほど多くはないようです。

そんななかでこれは、と思う作品を幾つかご紹介します。まずは”愛する映画たち"のうちから。

既にご紹介した「ガラスの墓標」同様、あとの3本もいずれブログで紹介する予定です。「殺人狂時代」は殺し屋仲代達也が次々に殺し屋に狙われる話なので「ブレット・トレイン」と似ているかも。「Mr.&Mrs.」は主役がブラピなので、これまた「ブレット」つながりと言えます。

その「Mr.&Mrs.」でブラピと死闘を繰り広げるアンジェリーナ・ジョリーは、ティムール・ベクマンベトフ監督の「ウォンテッド」では殺し屋組織の凄腕メンバーとしてジェームズ・マカヴォイを鍛え上げ、発射された拳銃弾が弧を描いて障害物の背後の標的に命中するという荒業(?)を教え込みます。
アンジー自らが実践するこの技を見て、雷鳴撃ちを想起しましたが、それはまた別途。

「Mr.&Mrs.」と同じようなシチュエーションなのが、ジョン・ヒューストン監督でジャック・ニコルソンキャスリーン・ターナーが主演した「女と男の名誉」ですが、夫婦の対決というテーマとしてはユーモアが足らず、暗めの仕上がりになりました。

前述の2本を含め女性の殺し屋が多いのもこのプロットの特徴なのか、クエンティン・タランティーノの名を一躍高めた「キル・ビル」シリーズではメインの6人の殺し屋のうち4人が女性。
ユマ・サーマン演じるザ・ブライドも強かったですが、愛する映画のひとつ「ロング・キス・グッドナイト」のジーナ・デイヴィスは、男女合わせて最強の殺し屋ではないかと思わせる活躍を見せました。母は強し、ということでしょうか。

「ロング・キス」は記憶を失った元殺し屋が殺し屋につけ狙われますが、このプロットは「ボーン・アイデンティティー」と同じ。「ジェイソン・ボーン」シリーズの原作、ロバート・ラドラムの「暗殺者」は1980年に発表されているので96年公開の「ロング・キス」がパクったのかもしれませんが、映画的には「ボーン・アイデンティティー」(監督は「Mr/&Mrs.」のダグ・リーマン)に先行しています。

映画版ジェイソン・ボーンの詳しい出自は忘れましたが、原作では謎の暗殺者カルロスを抹殺する殺し屋として訓練された諜報部員でした。
こういう政府公認の殺し屋集団が存在するのはよくあるプロット(ダニエル・クレイグ版の007もそんな位置づけでした)で、ジェームズ・カーンロバート・デュバルが対決する「キラー・エリート」もそのひとつ。アメリカ映画に忍者がでてくると雲行きが怪しくなるよい例ですが、そのあたりを受け入れてしまえばさすがのサム・ペキンパー監督作らしい面白さがあります。

狼の挽歌」で殺し屋を演じたチャールズ・ブロンソンマイケル・ウィナー監督の「メカニック」でも殺し屋を演じ、弟子のジャン=マイケル・ヴィンセントと対決しますが、丁々発止の直接対決にはいたらずいまひとつ盛り上がりに欠けました。

最後にもうひとつ日本の作品を。「殺人狂時代」を撮った岡本喜八は正統派というよりは奇才と呼びたい監督でしたが、同じく奇才の名にふさわしい鈴木清順は、パロマのガス炊飯器で炊く米の香りで恍惚とする(写真)実力No.3の殺し屋宍戸錠が、上位のNo.1から4までの殺し屋たちと争う「殺しの烙印」を撮っています。
設定と出だしがギャビン・ライアルの傑作小説「深夜プラス1」に酷似しています(多分パクリと思われます)が、あちらはドライバーが主人公で殺し屋(ガンマン)は脇役でした。