#46 ガラスの墓標 Cannabis (1970) | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

ジャンル:悪党が主役の犯罪映画
製作国:イタリア/ドイツ/フランス
監督:ピエール・コラルニック
愛するポイント:「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」で一世を風靡したカップルが繰り広げる"暴力とセックス"の美しさ

法を守る立場の警官・刑事や判事、法の向こう側にいる常習的犯罪者、どちらの立場も採りうる弁護士など、犯罪(関連)プロフェッショナルを主人公にした映画は多いですが、それらの中でロマンスを中心に据えた作品は意外と少ないように思います。

一般人が主役の犯罪映画となると「愛が故の犯罪」のようなテーマでロマンスが中心になることがむしろ多いのですが、やはり危険と隣り合わせの職業(強盗や恐喝や暗殺を"職業"と言ってよければですが)を描く場合は、ロマンスよりもその危うさそのものの方が主テーマとなるのでしょう。
自分の"愛する映画たち"を眺めれば、「狼の挽歌」や「ゲッタウェイ」、「真夜中の刑事/PHYTHON357」のようなロマンスの色濃い作品が多く目につきますが、同ジャンルのその他の3つ☆作品の大半では、ロマンスの影は薄い(「ザ・ドライバー」など)か添え物的な扱い(「ブリット」など)にすぎません。犯罪+プロフェッショナル+ロマンス好きは私個人の嗜好によるもののようです。

そんな自分が愛する映画の中でもとりわけロマンス色が濃いのが本作。「狼の挽歌」ではチャールズ・ブロンソンジル・アイアランドのおしどり夫婦が虚実ないまぜの恋と命のやりとりを繰り広げましたが、こちらの主役はフランスの国民的歌手故セルジュ・ゲンズブールと当時の愛人(事実婚の妻)で超人気のバッグ"バーキン"の考案者ジェーン・バーキン
さらにもうひとり、日本ではあまりなじみがないと思いますが主にイギリスのミュージック・シーンで活躍したポール・ニコラスが加わり、危険な大麻(原題のCannabis)ビジネスに絡んだ愛欲と暴力のストーリーを繰り広げます。

大胆で美しいバーキンとゲンズブールの愛欲がひとつの柱ですが、もう1本の柱が殺し屋ゲンズブールと相棒ニコラスの仕事(殺し)のシーン。一般的に見られる暴力的な乾いた感じではなく、"美しさ"を感じさせる映像が印象的です。

娯楽映画の基本要素は暴力と(恋愛を含む広義の)セックス」という持論をそのまま具現化した作品と言え、映画としての質を超えて愛する理由もそのあたりにあります。

"暴力とセックス"を美しく演出・映像化したピエール・コラルニック監督ですが、作品数が少なく、あまり知られていないと思われます。
本作もよく知られた作品とは言えず、「狙撃者」のようなカルト的な人気があるという話も特に聞きませんが、日本を含め放送禁止とする国もでたデュエット「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」を発表したゲンズブール+バーキンカップル主演作だからこそDVDでも観ることができるのでしょう。