運び屋 The Mule (2018) ☆☆ | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

このブログに頻繁に登場するのでおわかりと思いますが、自分はクリント・イーストウッドのファンで、主演作はほとんど(「人生の特等席」はそのうち観る予定)観ています。監督作もかなり観ていますが、「ほとんど」ではなく「かなり」なのは、最近の「実話の映像化」路線にあまり共感できないから。そのあたりはまた別途記事にさせていただきます。
本作もやはり実話ベースとわかっていたものの、ひさびさの自身監督による主演作ということで、劇場からテレビ放映へと回ってくるのを心待ちにしていました。で、観た結果としては満足、です。

監督と主演を兼ねるのは難しい、という声もあるようですが、イーストウッドは自分をどう撮ればよいか、誰よりもよくわかっていると感じます。本作では193cmという長身が縮んだ感じすらするほど年齢を感じさせました(役柄通りなので問題ではありません)が、タフな人生を送ってきてある程度丸くなったもののまだまだ気骨のあるキャラクターを見事に演じ、かつ映像にしていました。
自分を撮る以外の演出も慣れているというか無駄がないというか、よく一緒に仕事をしているであろうスタッフが優秀かつ気心も知れているからかもしれませんが、90才間近にして衰えを感じさせないのは大したものだと思います。
本作もイーストウッドというスター俳優が演じていることでフィクション感が強まり、実話がもとにあるということにあまりこだわらずに楽しく観られました。

麻薬密売関連の話としてはユニークだと感じたのは、自動小銃や大口径の拳銃で武装した犯罪者たちが、一皮むけば人が好い、そこらにいる人物として描かれていること。犯罪映画なので、なにが起こるかとハラハラしながら観ましたが、結局最後までドンパチはなく、撃たれる人も「ほとんど」いないストーリーでした。「マイアミ・ヴァイス」の真逆を行く感じですね。
主人公のキャラクター設定も、家族との関係の描写も、ヤクの売人たちのふるまいも、犯罪が日常にあふれた大変な世の中だけどできれば平和に仲良く暮らしたい、みたいな(犯罪者も含む)市井の人間のホンネが色濃くでていました。

残酷な描写もこれといってないのでおすすめしやすいのですが、実話がもとになっているとわかると、フィクションとして脚色されたところがどうしても気になってしまいます。全体としては上手く想像力を働かせたと思いますが、唯一、麻薬密売団のボスのアンディ・ガルシアブラック・レイン)が登場する部分は違和感を感じました。ネタバレになるのでどこがどうとは言いませんが、☆1つ分減じた悩みがそこにあります。

ほとんど初見だったブラッドリー・クーパー(最近「アリー スター誕生」で再見)がなかなか好演だったので、やはり実話系なので録画したままなんとなく敬遠していた「アメリカン・スナイパー」も観てみようかと考えています。