ヘンリー・フォンダ拾遺 | 映画の楽しさ2300通り

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また?とお思いの方もおいででしょうが、ヘンリー・フォンダのことを書いたらその作品のこともいろいろ書きたくなってしまいました。
没後40年近くたって(1982年没)あまり作品を見たことがない方も多いことでしょう。最近2つ☆から3つ☆に昇格(?)した「刑事マディガン」と「荒野の決闘」「ウエスタン」を除くおすすめ作品を公開年度順にご紹介します。

丘の一本松 (1936)
西部劇を観るつもりで観ましたが、場所と言い時代と言いいわゆる西部劇ではありませんでした。西部劇でよく扱われるFeud(氏族間などの長年にわたる流血の確執)を題材にしていますが、銃器ではなく重機(ブルドーザー?)が登場する西部劇はさすがにないでしょう。
それはそれとして、頑迷さと誠実さを併せ持つヘンリーのキャラクターが活かされた作品です。

牛泥棒 (1943)
クリント・イーストウッドが好きな作品として挙げている社会派西部劇。西部劇でよく描かれるリンチ、あるいは市民による裁きを正面から取り上げています。
一部の、というか大勢のアメリカ人が考える正義の在り方について考えさせられる作品。

十二人の怒れる男  (1954)
もうひとつの、法にのっとった正義の在り方を描いた超有名作。ヘンリー・フォンダの役者としての評価を決定づけた作品だとも思います。
本作で陪審員制度を学んだ映画ファンも多いはず。「牛泥棒」と観比べてみるとまた面白いかも。

ワーロック  (1959)
「荒野の決闘」で演じたワイアット・アープの実像を描いたような作品。ヘンリーは単純に善悪のはかりでははかれないキャラクターを演じました。
当時の西部劇としてはひねったキャラクターと人間関係がユニークですが、ガンファイトもふんだんにあって自分のようなフツーの西部劇ファンにも楽しめます。

テキサスの五人の仲間  (1965)
テキサス、と言っても西部劇ではなく、ポーカーの話。原題(A Big Hand for the Little Lady)にはご覧の通りテキサスのテの字もありません。
ネタバレなしで観るのがおすすめなので、名優の主演作を観る、というつもりでご覧ください。

ファイヤークリークの決斗 (1968)
ジェームズ・ステュアートと共演した西部劇で、ここでもヘンリーは悪いばかりではない悪役を演じています。保安官役のステュアートのキャラクターにもひねりがあってシンプルな爽快感は得にくいですが、リアルな面白さがある作品と言えるでしょう。

大脱獄 (1970)
西部開拓時代の刑務所を舞台にした、一風変わった西部劇。カーク・ダグラスとの真っ向勝負は貫禄勝ちか?ここでも善悪でくくれないしたたかなキャラを見せてくれます。

わが緑の大地  (1971)
主人公ポール・ニューマンの頑固で一本気な父親を演じた作品。ヘンリーの多彩な持ち味の一面を強調したキャラクターが印象的でした。
主演のポール・ニューマンが監督も務めています。

ミスター・ノーボディ (1973)
「ウエスタン」は、セルジオ・レオーネ作品とは言え本家西部劇の味わいを持つ作品でしたが、こちらは完全なマカロニ。テレンス・ヒルの「風来坊」シリーズの一作と言えますが、ヘンリーの起用によりぐっとしまった作品になりました。
怒りの荒野」(3つ☆)のトニーノ・ヴァレリ監督、エンニオ・モリコーネが音楽を担当しています。

黄昏  (1981)
ヘンリーと、彼と2番目の妻との間の娘ジェーン、息子ピーターの間には長い間親子の確執がありましたが、ヘンリーが強烈な悪役を演じた「ウエスタン」あたりからお互いを認め合うようになり、ついには共演するに至ったという作品。アメリカを代表する役者のひとりであるヘンリーが本作で初めてオスカー(主演男優賞)を受賞したというのが意外ですが、めぐりあわせというものがあるのでしょうね。
親子としても俳優としても認め合い、演技者として公にも高く評価された本作がヘンリーの遺作となりました。