緑茶 ☆☆☆ | 映画の楽しさ2300通り

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ある映画好きからすべての映画好きへの恋文
Love Letters to all the Movie Lovers From a Movie Lover

タイトルに惹かれて何の予備知識もなく観たので、ラブロマンスなのかサスペンスなのか判らないまま、スリリングな至福のときを過ごしました。

チャン・ユアン監督の演出は人物の配し方からクローズアップの使い方、画面の切り取り方まで完全に好みでした。緑茶のグラスを弄ぶヴィッキー・チャオの美しさ!は、さらには緑茶の美しさでもあるし、脇で登場する画家のアトリエに置かれた絵の美しさにも魅せれます。

呉芳(ウーファン:チャオ)の語る「友人の話」がまた素敵です。「パリ、テキサス」でも思いましたが、映像抜きで語られる物語には、想像力を掻き立てる寓意性と共に想像の域を超えた神話性があるようです。俳優(女性に限らず)という美しい存在に語られれば尚のことかもしれません。
生きることにおける人の孤独の深さと、他者との交感の怖ろしい魅力と癒しが、コーヒーでもタバコでもなく、緑のお茶だからこそ凝縮されたようなミステリアスな刺戟と高揚(多分カフェインのせいでしょう)を堪能しました。

ただひとつ、難、ではありませんが、見合いを繰り返す呉芳の方が謎の美女朗朗(ランラン:チャオの二役?)より美人に見えてしまうので、「よく見ると美人」などの登場人物のセリフに無理があるように感じます。あるいは好みの問題でしょうか。