「愛と哀しみのボレロ」 | アリスカフェへようこそ3

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我が町の映画館では「午前十時の映画祭」と称して、月に2本ほど昔の名作映画がリバイバル上映されています。先週は「愛と哀しみのボレロ」だったので、観に行って来ました。1981年、今から40年以上も前の映画です。マイオールタイムベスト映画に間違いなく入って来る1本です。(他には「スタンド・バイ・ミー」や「キャバレー」「ウェストサイドストーリー」「砂の器」など)

 

第二次大戦で人生を狂わされた4組のカップルとその子供の物語です。それぞれに実在のモデルがいて、ロシアからは、亡命したバレエダンサーのヌレエフ。ドイツからは ベルリンフィルの終身指揮者カラヤンが。そしてアメリカらは、グレン・ミラー、フランスからは、エディット・ピアフを思わせる主人公たちとその親の世代からの人生が描かれています。

 

まずは4人の親たちの結婚と子供誕生の物語が、目まぐるしく入れ替わりながら、戦争へと突入していく世情と共に描かれて行きます。ユダヤ人故にアウシュビッツへ送られる音楽家夫婦、占領下のパリでナチス兵と付き合ったために坊主にされ制裁の受ける女性。その才能故にヒトラーの覚えめでたく、戦争部隊の楽団指揮者に抜擢される者などなど・・・。

 

やがて戦争が終わり、彼らの子供が大きくなって それぞれバレエやオーケストラ、楽団などの奏者として、赤十字社とユニセフ主催のパリのチャリティーイベントに導かれるように集まって来るのです。このラスト20分ほどの、ジョルジュ・ドンによる踊り「ボレロ」は、映画を観た事のない人でも知っていると思います。

 

当時まだ20代だった私は、3時間を超す映画が、時代も場所(パリ・ベルリン・ニューヨーク・モスクワ)も、前後して描かれ、その上この4組の若き夫婦たちと成長した子供を、同じ俳優が演じていることもあって、観ていて頭が混乱したことを覚えています。それでも戦争という歴史には抗えない人生の哀しさのようなもので、胸がいっぱいになり、私にとって忘れえぬ映画の1本になりました。

 

 

 

 

 

 

これまでも動画配信で観られないかと検索したりしましたが、結果はどこも配信していなくて諦めていたところ、半年ほど前に3月に2週間限定で朝10時から上演すると知り、ずっと楽しみにしていました。20代の私と、現在の私では、映画の理解度も違うと思います。「あの頃の私は一体どんな想いでこの映画を観たのだろう?」と、まるでもう一人の自分が、当時の私を俯瞰しているような感覚になりました。そして反戦映画でもあるこの映画を観ながら、ウクライナやガザ地区で今現在起こっている戦争に想いを馳せ、「時代」というものは少しも変わらないんだという事も改めて思いました。