感無量 ~神経質アビーと献身的なダンテ | Rakuenありす ~自然農園/農薬・化学肥料不使用

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孵卵器で孵ったペキンバンタムとポーリッシュの雛ダンテ。
生まれて初めて育児ノイローゼを体験したヒヨコ育て。
ダンテの娘アビーは神経質で、
乱暴者で大食いいたずら坊主の南部かしわ鶏。
棲息生物の方が運営者より強い「Rakuen」日誌です。

2023年12月30日

 

感無量 ~神経質アビーと献身的なダンテ

 

 今日が最後かも…と言ったのはいつだったか。

 鶏の外遊びのハナシである。

 あれは、遡ること22日であった。あれから積雪があり、やっぱりあれが最後だったね、と思っていたら、その後気温があがり、雨が降り、雪は溶けてしまった。

 ということで、28日から今日まで、また外で遊んでいる。とはいえ、草も枯れているし、虫も地中深く潜っているし、運動の意味しかないかもだが。

 今日もエサをやってから、扉を開けていたらペンペングループもダンテグループも外へ出て遊んでいた。

 午後、そろそろ中に入れちゃおうかなぁと思って、蕎麦の出汁に使った鰹節の出がらしを持って外へ出た。それをあげながらちょっとダンテ達の方にいたら、アビーちゃんが明らかに「卵産みたい」鳴き方をしてウロウロしていた。

 それで、棚の上に造った巣の方に巣材(枯草)を追加してみた。アビーちゃんは一番神経質でなかなかすんなり巣にこもらないことが多い。他の子たちもだが、新しい巣材を追加すると、そこに入ることが多いので。

 アビーちゃんが鳴きながハウス内をうろうろしていると、ダンテがすかさず、追加された巣に入り込んでアビーちゃんを呼んだ。するとアビーはすぐさま反応してダンテが呼んでいる巣に向かう。

「おお」と心の中で静かに思って眺めていると、アビーちゃんが巣に潜り込み、ダンテは入れ替わりで出てきた。

 そのままアビーちゃんがいる巣の前で待機しているダンテを見て、なんだか、ちょっと感動しながら家に戻った。

 しかし、アビーちゃんの巣探しの鳴き声が再び響いて来た。

 また巣から出たんかい、と思っていた。

 しばらくして再度行ってみると、アビーちゃんはうろうろ。ダンテがまた巣の中でアビーちゃんを呼び、アビーちゃんはその巣に入る。

「今度こそ産卵できるかな」と思って、今度は朱鷺(shuro)も産卵の瞬間を見届けようと少し離れた場所で一緒に見守ってみた。

 最初、ダンテは地面で心配そうにアビーちゃんを見守っていたが、結局またすぐ近くまでのぼって傍に佇む。

じっと動かないダンテ、中で何度も姿勢を変えて動き回るアビーちゃん。寒さで足が冷たくなってきて「早く産めよ」と思っている朱鷺(shuri)。

他の子たちはそれぞれ思い思いの場所で休んでいる。黙って立っているダンテは段々眠くなっていた。尾羽がだらんとなり、形が丸くなってしまって、時々目を閉じている。それでも、辛抱強くアビーちゃんを見守っている。

 ところが、結局、またアビーちゃんは外へ出てきて、あちこちうろうろ始める。すると、ダッキーが傍に来て、何故か「コケーコッコ」が始まり、ダンテまで叫び出す。

 アビーちゃんはトニー達の囲いの上に乗って産卵場所を探すのだが、箱の上に糞をされたり、ズラされたりして大変迷惑。

 ダンテはまた一緒に産卵場所を探してあげて、最終的にはさきほどと同じ場所で呼んでいる。アビーちゃんがあちこち行ってる間に、ノアやマロン、ブランにネージュが集まり、「お前らまだ卵産まんだろが」という連中が巣の周りに集合。

 ようやくアビーちゃんがやって来て、ダンテの下に潜り込むと、ダンテは巣を出てきて、今度は巣の前にそのまま佇んですぐ近くでアビーちゃんを見守っていた。巣の中でアビーちゃんが鳴くと、それに反応して「クルル」と低く優しい声で鳴いている。

 なんだか、俺は非常に感動してしまった。

 ダンテはもしかしてすごく優しい男に育ったのかも知れない。

 感無量だった。

 今度も眠くなって時々目を閉じながらずっと立っていたダンテだが、しばらくするとそこを下りて外へ遊びに行ってしまった。あれ、マジか。と思っていると、アビーちゃんも数分後には巣から出てきた。

「え?」と思って見てみると、巣には生みたてのあったかい卵がころんとあった。

 もしかして、ダンテはアビーちゃんの産卵を確認したから行ってしまったのかも知れない。