2026年7月25日
風、薫る ~私信に代えて
NHKは、報道はクソだけど、ドラマは質が高い。
これは、りんかの言葉だ。
報道は政府広報とSNSの紹介という価値のないシロモノなんで、ほんとうに民間に譲った方が良いレベルなのは周知(羞恥)の事実。
だけど、深夜ドラマ(いや、深夜には観ない。日中の再放送でたまに観るのだが)なんかもそうだし、朝ドラもそう。すごく質が高い。見応えがある。監督さんの志もだし、レベルが高いんだろう。
脈動。
直美さんと初代夕凪、柳川文さんの週だった。
お守りと文さんの髪飾りの布が同じだと気付いた直美が、寛太に柳川文のことを調べて欲しいと依頼する。そして、文さん本人にも直接ぶつけてみた。「わたしの母親ですか?」と。
今日は調子が良いのでちゃんと料理をした、と手料理を振る舞う文と、食卓に就いたときに。その質問を受けた文の静止した横顔が答えだったよな、と朱鷺(shuro)は思った。
赤ん坊を名前も付けずに捨てるような女に見えるんですね? そう答えた文。そんなひどいことをするような女に、と。
それはつまり、自分は、そんなひどい女だから、親だと名乗る資格なんかないのだ、ということだよなぁ。
直美さんに気がある内科医、藤井先生。彼の休みの日に往診を頼んで、文を診てもらった。本人には「ひどい胃炎」と告げたが、直美さんが「母親なんです。…母親のような人です」と聞くと、胃がんであること、すでに全身に広がっているので手術も治療法もないと教えてくれた。
医者は、治療法のない患者には出来ることはない。だけど、看護は必要。だから頑張って、と。
母親ではない、もう、来なくて良いと言い出した文に、嫌がられても来ます、と帰宅した直美。
環がりんに助けを求める手紙を送り、りんが急遽休みをもらって急いで帰って来た。
文さんにどうしてあげれば良いのか分からないと悩む直美に、りんは言った。それは、違うと思う。文さんにどうしてあげるかじゃなくて、直美さんは子どもなんだから、したいようにして良いんだよ、看護婦しなくて良いんだよ、と。
直美は、文にほんとうの病名と余命を告げた。すっきりした。ありがとう。悩ませてしまってごめんね、と微笑む文。
何かしたいこと、行きたい場所、会いたい人はいませんか?
看護したまま横で一緒に眠ってしまった直美を、ふと目覚めた文が身体を起こしてじっと見つめる。その表情が「慈愛」だった。ああ、母の顏だ、と思った。赤ん坊だったときの面影を見ているのだろう、そして、成長した我が娘をこれ以上ないくらいに愛しい思いで見つめていたのだろう。後で美津が言ったように、もう他に何も要らないくらい幸せな瞬間だ。
そして、直美の胸元に僅かに見えるお守りを見つけたとき、文は、そのお守りを買ったときを思い出した。
「ここ(浦崎八幡)に来た頃が一番幸せだった」
直美さん、やりたいことがあります。
寛太が二人を浦崎八幡まで連れて行ってくれた。そして、ここの神様にはお世話になったから、とお礼参りを済ませた文。
成長した娘の姿を見ることが出来た。良い友人に出会い、思いを寄せてくれる男性の存在を知り、周囲にたくさん素敵な人たちがいる。娘に手料理を食べさせ、最後に一緒にささやかな遠出をした。
「わたしなんかと違う。あなたは大丈夫」
そんな言葉を遺して、文は恐らく思い残すことなく旅立った。最後まで母だと名乗ることはなかったが、母子としての心の交流、お互いの想いの交錯、愛憎も感謝も謝罪もほとばしるように激しく二人を取り巻いていた。空気の密度がすさまじかった。
帰宅して、環の寝顔を見て、「どうしてでしょう、寝ているときが一番かわいい気がします」と言った直美。「それは簡単。親だから」と美津。
直美が環の二人目の母なら、美津は直美の二人目の母なんだと言った。だから、直美の寝顔も可愛いもんだと。一人目のお母さんはもっとだったでしょう、赤ん坊だった直美の寝顔を見て、成長した娘と過ごせた時間はかけがえのないものだっただろう、と。
よく、頑張りました。
泣きじゃくる直美を抱いて、美津は言った。
「狭い部屋に二人、直美さんの名前を呼びながら過ごした時間は人生のこれ以上ないご褒美だったと思いますよ」と、卯三郎が、文から託されていた遺品(全財産)を直美に渡すときに言った。
りんと直美の、家族として、友人としての関係性が、とても良いな、と思った。
そして、直美を取り巻く男性たち。藤井先生、寛太、軍人さん(名前忘れた)。きっと、直美は軍人さんと一緒になるのが一番幸せだと思う。明るい方へ引っ張ってくれるから。
そして、感想というより批評だけど、文さんの雰囲気が出てきたときからすごく独特で、女郎上がりの直美の母だという設定が分かってからは、ものすごくしっくりきた。遊郭で人気者だっただろうというしなやかさ、恋愛事情に鋭くて、他人との距離の取り方が絶妙で、それが冷たいわけでもなく、情のある整い方をしている。
直美の芯が情熱的なのに、表面的に冷めた振りをして、傷つかないために初めから壁を作る生き方が血なんだと思えた。
意地っ張りなところが似ていると卯三郎が言っていたが、まさにその通り。二人は母子なんだと納得出来る。そういう細やかな設定がそもそもすごいなぁ、と感嘆する。
ドラマの質が高いよ。NHKさん、報道は諦めて、ドラマにもっと予算使ったら良いんじゃない? NHKのニュースなんて誰も観てないし信じてないよ。
そして、この週の流れを眺めながら、ハルくんとの別れを思った。
ハルくんは、何を思って逝っただろうか、なんて考えている時点で、朱鷺(shuro)は、未だこの別れをまったく整理出来ていないし、腑に落ちていないし、別れの刹那、凍り付いた狭間に堕ちたままだということ。思い出として何か語れもしないし、渦中として悲しみ苦しみを言葉にすることも出来ない。
静止したまま、ずっと時間だけが過ぎている。
だから、ごめんなさい。
メッセージへの返信が出来ずにいます。
































































































































