ヘルゾンビ | アリスの映画鑑賞日記

アリスの映画鑑賞日記

見た映画を、毒舌を交えて紹介していく映画ブログ。ホラー映画過多気味ですが、気にしない気にしない。

クライヴ・バーカー ヘルゾンビ
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《おはなし》

 せめてお布団かけてあげてください。

《スタッフ・キャスト》


  監督:クライヴ・バーカー
  出演:ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク(トム)
     イワナ・ミルセヴィッチ(ジーナ)
     ブラッド・ハント(サム)

《感想》


 突如、世界中の9歳未満の子供たちが、原因不明のこん睡状態に陥る。10年後。正常な子供が生まれなくなった世界では、国連が出産禁止命令を下し、あちこちで暴動が起きている。そんな時、再び突然子供たちが眼を覚まし、大人たちを次々と殺し始めたのだった・・・。
 世界観の描き方は絶妙。終始寂れた田舎町が舞台になっていますが、時折画面の端に登場するニュース番組の効果で、どれほど世界にこの奇病が蔓延しているか、その現象にどう政府が対処して行っているかよくわかります。ジワジワと追い込まれていく閉塞感が実に上手い
 だけど、一体どうしたのでしょうこの低予算ぶりは。クライヴ・バーカーといえば、『ヘルレイザー』で一世を風靡したホラー界の重鎮。なのにテレビシリーズ『マスターズ・オブ・ホラー』よりもお金がかかっていなさそうな雰囲気。
 舞台になる町は、ひなびた田舎町。出てくる建物もみなボロボロで廃墟?っぽい。唯一動く車も廃車寸前。子供たちが収容されている病院は、どうみても学校。お金ないので深夜の学校でロケさせてもらっていますといわんばかりの低予算映画。どうしたバーカー。とうとうスポンサーがいなくなってしまったのか・・・?
 俳優はほとんど無名。唯一ドラマ『ドーソンズ・クリーク』のJ・V・D・ビークが出ていますが、彼の変貌振りにもまたビックリ。ドーソン役で清純派アイドルだった彼が、いつの間にこんな小汚いおっさん役をやるようになったのでしょうか。子供の成長ってほんとうに残酷ですね。
 邦画タイトルは『ヘル・ゾンビ』となっていますが、登場する子供たちはゾンビじゃありません。動く死体ではなく、「病気の子供」。なので、劇中でも普通のゾンビ映画のようにバッタバッタ無駄に殺しあげるわけにも行かず、せいぜい正当防衛的殺人しか出来ないところは、ちょっとゾンビ映画好きには物足りないポイント。メイクにもお金がかけれないらしく、内臓一切なし、血糊もかなり少な目でございます。
 しかし、集団で襲ってくる子供たちの不気味なこと。しかも動きがシンクロ。物言わぬ子供たちが静かに襲ってくる映画といえば『光る眼』辺りを思い出してしまいますが、あの映画が好きならこの映画の世界観が気に入ってもらえると思います。とても静かなホラーです。
 9歳未満の子供たちがこん睡状態に陥った10年後と言う設定なので、その時悲劇を免れた現在19歳になった若者達。大人になりきれず、子供とも違う微妙な立場に置かれた、この最後の子供たちがこの映画で重要な見所となっております。でも低予算(言い切ってしまいますが)だから、登場人物が少なく物足りないような気もします。もっと人間ドラマを深く掘り下げてもらいたかったなあ。映画というか、連続ドラマ向きの作品。ラストの強引さ、主人公の悟り具合がすごく気になってしまったので、ホラー映画として無理に完成させず、スリラーとしてじっくり見てみたかったです。


《私の評価》
 
     ☆☆