- 一命 スタンダード・エディション [DVD]/市川海老蔵,瑛太,役所広司
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久々更新でお届けするのは、時代劇です。
ジャケ、かくい―ですね。
この作品、かなりの豪華キャストですが、「海老蔵かっこいー♡」「瑛太だいすき♡」というノリの人は、【決して見てはいけない映画】、になっております。
何を隠そう、小林正樹監督の「切腹」のリメイク。
ええ、切腹モノでございます。
江戸時代、幕府の不当な廃藩により、ちまたには元武士が増えていった。
プライドは高いが、商才はない彼らは金に困り、近頃は「狂言切腹」が流行している。これは、貧乏浪人が名家の軒先を間借りし、食い詰めるよりは名誉ある切腹を選ぶとして、それに感銘した家主から仕事を世話してもらうか、迷惑がられて小銭を握らされるかで、これは当時一種のゆすりの代名詞となっていたのだ。
そんな時世、名門井伊家の玄関先に津雲半四郎(海老蔵)という一人の浪人が、ぜひこの家で切腹をしたいと訪ねてくる。
だが、この家では先日千々岩求女(瑛太)という若者が、非常にむごたらしい切腹を行ったばかり。井伊家の面々は、皆口をそろえて止めるよう半四郎に言うが、彼は狂言などではなく、どうしてもやり遂げたいと一歩も譲らない。
仕方なく、井伊家では切腹の仕度を整えてやり、半四郎最期の言葉を聞くことになる。やがて、彼の口から意外な真相が語られるのであった…。
前半の見どころは、やはり瑛太の切腹シーン。
妻子が病に倒れ、名刀はとうに質草になり、持っているのは竹光。
狂言切腹を赦さない井伊家では、見せしめの意味を込めて、彼の刀が竹光と知っていながら、「自分の刀で腹を切れ」という。
竹光、竹の棒ですよ?
これで腹を切るんです。
もちろん普通にやってても切れません。
こう、グザグサグサグサっと渾身の力で何度も腹に突き刺して、やっと何とかつき刺さっても、切腹ですから、そこから更に横にぐいと挽かなくてはなりません。
歯がないのに?
普通の刀でも、相当の激痛なのに、切れもしない竹光でぐいぐいひかせる。
瑛太がんばって、推定三センチくらい進んだところで、後ろの介錯人に助けを求めます。どうか早く楽にしてくれと。
もともと切腹は即死できない自殺方法。恐怖とショックで虚血し、出血もさほどしない。はらわたが腹圧でとびだしたとしても急所から遠い。などの理由で、一晩生きていたという事例もあるようです。初期のころは、横縦さらに横と、なんども切りつけていたそうですが、余りにむごいというので、次第に介錯人というシステムに変わっていきました。切腹人が少しばかり横に挽いたら、すかさず介錯人が後ろから一刀で首を斬る。即死させてやるんですね。そして前のめりに綺麗に倒れさせるために、首は皮一枚残して斬らねばならず、相当の手練れでないと務まりませんでした。
なので、瑛太の後ろにもちゃんと介錯人がいてる。
だけど、その介錯人は「まだまだ、存分に挽きませい」と言って、死ぬことを赦さない。
再び竹光で、みりみりと腹を裂こうとする。
竹光が折れて、それをはらわたにぐさぐさ突き刺しても、やはりなかなか切れない。
全身に脂汗をびっしりとかき、口から血を流しながら、赤黒い顔で瑛太は再び介錯人をふりかえるが、「まだまだ」と言って許してはくれない。
しまいには、竹光を地面に立てその上に覆いかぶさり、全体重をかけて引くことになる。
オリジナルだと、苦痛に耐えきれず首を掻っ切るようですが、さすがというか三池監督らしいというか、この息が苦しくなるようなむごたらしい切腹シーンを長々と撮り続け、見せ続ける。
ぐろい映像に相当に慣れている私ですら、見ていて胸が悪くなる。
人間の残酷さにめまいがする。
この前半のシーンだけで、相当ですよ?
今書いていても、まざまざと光景が思い出されて、嫌な気分になる。
いや、それだけ瑛太の演技力がすごいともいえるわけなんですが。
相当覚悟して見てくださいね(笑)。
しかも、これ公開当時3Dだったとか・・・・もう、どうかしてる(笑)。
後半は海老蔵が、もう男前でかっこいい武士魂を見せつけてくれるのですが、やっぱりこう、ずーーーんと重い。
見た後、何日か頭から離れず、いろいろ考えてしまう。
そんなダウナー作品。
でも、嫌いじゃない。
《私の評価》
☆☆☆☆☆