テキサス・チェーンソー ビギニング | アリスの映画鑑賞日記

アリスの映画鑑賞日記

見た映画を、毒舌を交えて紹介していく映画ブログ。ホラー映画過多気味ですが、気にしない気にしない。



《おはなし》

 デブも使いよう。

《スタッフ・キャスト》

  監督:ジョナサン・リーベスマン
  出演:ジョルダーナ・ブリュースター(クリッシー)
     テイラー・ハンドリー(エリック)
     R・リー・アーメイ(ホイト)

《感想》

 息子がインフルエンザにかかり、どうやら今週はたまった映画が消化できそうなアリスです。熱が高いせいか、タミフルを飲んでもいないのに夜中いきなり奇声を上げたり、今どこに自分がいるのかわからなくなったり、怖い怖いと泣き叫んだりしている息子。薄暗い部屋の中で、爛々と目が光っている、別人のような態度を見せる息子と一緒にいることは、どんなホラー映画を見るよりも恐ろしい体験でした。今は普通ですけど。
 さて、本作はまたまた《無修正》ということで、即買いしてしまったDVD。さすがに『ホステル』を見た後だと、どんな残酷描写もちょっと可愛らしく思えてしまいますが、しかし飛び散る肉片、唸るチェーンソー、ヌラヌラ生皮剥ぎシーンなど、見所満載。十分楽しめるホラー娯楽作(!?)。
 続編に飽きてきたハリウッドが、最近やたら仕掛けてくる前日談もの。007やバッドマンに始まり、ホラー界でも『ハンニバル・ライジング』・『エクソシスト・ビギニング』などが製作されています。既存のキャラクターを深く掘り下げることにより、さらにドラマチックに、さらに感情移入しやすく、さらにストーリーに入り込みやすくなるのが狙いだと思いますが、今までどの作品も大成功を収めていますね。本作も、ホラー界の大御所、レザーフェイスが、あの殺人一家が、いかにして誕生したかを描いた作品。
 殺人一家のキャストは、03年のリメイク版『テキサス・チェーンソー』そのまま。ホイト役のR・リー・アーメイがサディステックな保安官役で本領発揮。腕立て伏せを強制しながらの言葉責め(まあ、警棒でも責めてますが)は、あの映画を髣髴とさせる、マニアには嬉しい設定であります。
 舞台は1969年。ベトナム戦争に兵士として赴く予定のエリックとディーンの兄弟は、最後の週末、それぞれのガールフレンドを連れてテキサス縦断の旅に出る。しかし途中でバイカーに襲われ、事故にあってしまった彼らは、全員大怪我を負ってしまう。そこに現れたのは、一人の保安官。助けてもらえると思った矢先、保安官はいきなりバイカーを射殺して、エリックたちを監禁。いずこかへ連れ去ってしまう・・・。
 食肉解体工場で生まれ育ったレザーフェイス=トーマスにとって、生き物を殺し、肉を解体することは彼の人生の全て。その仕事だけが、醜さ・愚かさにコンプレックスを持っている彼の唯一認めてもらえる長所。そんな彼のオアシスであった食肉工場が閉鎖されたことによって、生きがいを奪われてしまったトーマスは、家畜以外の生き物を殺すことに、次の生きがいを見出すことになる。  

 よき理解者、ホイトや家族の命じるまま、何の躊躇無く人を殺す。彼には罪悪感や後悔という感情などありはしない。目の前にあるのは、ただの肉。家族以外の人間は家畜と同じ、食料でしかないのです。台詞は一切ないのに、顔半分覆われたマスクから見せる、無機質で鬼気迫る目だけの演技が、レザーフェイスの恐ろしさを全身で表現しています。
 もともと血のつながりはない家族なので、拾われた先がこんな異常な家庭でなければ、トーマスがこれほど歪んだ人格に成長することは無かったはず。育てる環境が人格を作る。悪い見本のような映画ですね。
 運悪くこの場に居合わせてしまった四人の男女。前途洋洋のはずの彼らの未来は、異常な変態家族により無残に引き裂かれてしまいます。前日談、というだけあって、彼らに救いは無いのです。拉致され、いたぶられ、なぶり殺しになっていく若者達。
 『パラサイト』の美少女、ジョルダーナ(ジョー・ダナ)・ブリュースターが、血まみれヒロインを体当たりで熱演!この人、ホラー映画のヒロインなのに、ほとんど泣き叫んだりしません。目の前、ほんのわずかな距離で最愛の人がむごい殺され方をしていても、両手でクチを押さえ、必至で悲鳴をかみ殺す。そんな彼女の必至さが余計画面に緊張感をもたらし、見ているこっちも息が詰まります。特に終盤、目の前に出口が用意されており、このままだと誰にも見つからず安全に逃げ切れると言う時、二階から聞こえてくる親友の悲鳴。自分だけなら助かるのに、いやしかし助けを求める声をほっとくわけにも行かない。葛藤・後悔・人間性の駆け引き。そんな複雑な感情が入り混じった彼女の顔が、すごく印象に残っています。演じるジョルダーナは、イェール大卒の才媛。大学に行っている間、女優業を休止していたのですが、本作でカムバック。美しさにも磨きがかかり、これからがすごく楽しみな女優の1人であります。

《私の評価》

   ☆☆☆☆