笹本稜平著
徳間文庫
2012.1.26読了
☆☆☆☆
サハラ砂漠の油田の利権をめぐって繰り広げられる大国の策略と、それを利用して利を得ようとする者、さらにそれらに翻弄される者。相変わらずのスケールの大きさと、2転3転する展開で読み応えのある作品です。
ストーリーは全く関係してないけど「フォックス・ストーン」の檜垣がまたもや主役を張り、「マングースの尻尾」に出ている戸崎やピカールも重要な役柄で登場してます。こういう設定は、登場人物のキャラクターや生い立ちを深く理解したうえで物語を読めるのでとてもいいですね。もっとも、海堂尊作品みたいに登場人物があまりに入り乱れてしまうと、返って混乱してしまいますが(笑)。
内容的には、記憶を失った主人公の心の葛藤を描写するシーンが多く、そのあたりは笹本作品の中ではちょっと異質かな。
それと今回読んで気付いたのは、著者の作品の登場人物は、みんな一途であるということ。自分の使命や責任、義務を全うするために全力を尽くす・・・たとえそれが悪人であっても・・・。だから読んでいて何か清々しい気持ちになるんでしょうね。
しかし、サハラ砂漠の情景やそこに暮らすベドウィンの詳細な記述など、著者の情報収集力にはいつもながら感心します。