しまなみ後編の前に、ちょっと本の紹介を。
ディアスポラ
勝谷誠彦著
文藝春秋
2011.9.22読了
☆☆☆☆
原発事故で、放射能汚染された国土を棄てなければならなくなった日本国民。
統一した宗教も持たず、人種意識も低い日本人が国を失ったとき、そのアイデンティティを維持できるのか。チベットの辺境に疎開させられた避難民の家族を通して問いかける。
後半は、それでも日本に留まる決心をした造り酒屋の蔵元を中心に、絶望の中でもいま最善を尽くして生きることの尊さを訴える。
今回のフクシマの事故も、ひとつ間違えればディアスポラになっていた可能性も十分あったわけで、ストーリーには切迫した臨場感がある。ぜひ今このタイミングで読みたい。
コメンテーター、コラムニストとしての著者の文章には今までも触れることが多かったが、それらとはまったく異なる文学の香りのする筆致を読み、改めて著者は小説家でもあったのだと認識した。
しかし10年も前に本編を書いていたとは、勝谷恐るべし!。