ヤン・ピター③
2時間に渡る二人の音の世界は、俺をさまざまな場所に誘ってくれた。映像だったり、幻影だったり、精霊だったり。最後にリクエストをした「枯葉」。無理に頼んでしまったが、麻紀とヤンのジャズのスピリットに敬服した。俺は数年前に亡くなった最愛の父に、この「枯葉」を届けたかった。あの頃のジャズを愛した父。聞いてくれただろうか、父さん。俺の仲間はこんなにも人の心を打つ演奏ができる。いつまでも見守ってやってほしい。麻紀とヤンの未来を。ありがとう、ありがとう麻紀、ヤン。また今年、この地で。
ヤン・ピター②
ヤン・ピターはエジプトのウードというマンドリンに似た楽器も弾いた。これがなんとも脱力した心地好い音色で、いろんな風景が脳裏に浮かんでは消える。エリントンの名曲「キャラバン」では最高の効果をあげた。エリック・サティの曲が大半だったが、武満徹の美しい作品に心を打たれた。サックスを演奏する時の呼吸音を吹きすさぶ風のように見立てた。幼い頃の情景が現れだした。それに故郷の厳しい風雪。怒涛。そして亡き祖母の姿。自然と涙が溢れ、心の中に無数の鐘が鳴った。麻紀、ヤン。いっときでもばあちゃんに会わせてくれてありがとう。
ヤン・ピター
このliveにおいて演奏された主な楽曲は、エリック・サティ、デイブ・ブルーベック、ジョン・コルトレーン、武満徹とオリジナルだった。ヤン・ピターのギター演奏。世界でたった一つしかない銘器から紡がれるしなやかでいて剛健な音色。そこにペダル、アダプター、ループなどを操作し、色彩とグルーヴを持たせた。こんなプレイは絶対に田舎では聞けない。我が故郷の、井の中の蛙ギタリストどもに、ヤンの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい。ヤンのギターにはちゃんと思想と物語がある。同じ音でも決して同じようには聞かせん。ヤンは雲上人だった。