ルイーズ・ブルジョワ 《ママン》1999年 パブリックアートへの旅 @六本木ヒルズ | akki-artのブログ

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パブリックアートへの旅(←勝手に名付けた)

 

 

日比谷線の六本木駅で降りて、六本木ヒルズ方面へ。

 

 

地下通路から、長いエスカレーターで地上に出ると、左手に見えるのが、このクモの作品です。

 

 

 

 

 

 

 

●ルィーズ・ブルジョワ 《ママン》1999年

 

 

 

異様なクモの姿、初めて見た時はびっくりしましたね。

 

 

 

 

 

 

 

●作品の名前のプレート

 

 

 

1本のクモの足元に作品名が刻まれたプレートがあります。

 

 

これによって、ルイーズ・ブルジョワさんの作品で、1999年にオリジナルが作られ、ここに2003年の4月25日に設置されたことがわかります。

 

 

 

 

■ルィーズ・ブルジョワさん( 1911- 2011)

フランスのパリ生まれ、のちにアメリカに移住したアーティストさんです。

 

1982年にニューヨークのグッゲンハイム美術館で個展を開催し脚光を浴びます。

その頃彼女は70歳代。

 

遅咲きのアーティストさんなんですね。

 

 

今回紹介する《ママン》は彼女の代表作の一つ。

 

 

ニューヨークのグッゲンハイム美術館、ロンドンのテートモダン。ロシアのサンクトぺてルスブルグのエルミタージュ美術館など、著名な美術館を中心に、世界中に9点の作品があるそうです。

 

 

 

 

●六本木ヒルズと《ママン》

 

 

 

下の方に旅客機が写っています。

 

人や物や情報が流れ込み、また発信していく。まさに東京、港区、六本木ヒルズですね。

 

 

 

 

■ママンの背景

彼女はは自分の作品に自分の人生を投影するタイプの作家。

 

 

この作品のタイトルの『ママン』、フランス語でお母さんって意味です。

 

 

なぜお母さんが蜘蛛かというと、込み入った話があるのですね。

 

 

ブルジョワの実家はタペストリーの修復屋さんを経営していました。

 

 

お父さんが経営的な仕事を、お母さんがタペストリーの修復をして、表向きは裕福な家庭だったそうです。

 

 

 

実は男の子を望んだお父さんは、彼女に対して冷たい態度で接していました。

 

 

そのうち、お父さんの愛人が、住み込みの家庭教師になって家庭に入ってきました。

 

 

そしてお母さんはその関係を黙認していたようなのです。

 

 

お母さんは、何より大切な子供や生活の持続のため、妻や女としてより、母として子供の将来や仕事の安定を優先して暮らしていたのでしょうね。

 

 

 

忍耐強く、プライドを捨てたようで、実はとても気高い気持ちを持ったお母さんなのですね。

 

 

そんな姿をブルジョアは、お腹に卵を大切に抱えたクモに見立てて作品にしました。

 

 

 

 

●《ママン》お腹の卵の部分

 

 

 

 

 

 

 

 

■ギリシア神話 アラクネの寓話

 
ここからは私的意見。
 
 
タペストリー、腕の良い機織りの女性、クモ。
 
といえば、ギリシア神話のアラクネの話を思い出してしまいます。
 
 
ざっくりとしたストーリーは、
 
 
アラクネはとても優れた織り物を作る女性。
 
 
その腕前は機織りを司る女神アテナを凌ぐとも言うほど。
 
 
それを知ったアテナは、老婆の姿で神の怒りを受けないように彼女を諭したのですが、、、
 
 
結局、アラクネはアテナと機織りの勝負をすることになります。
 
 
アラクネの作ったタペストリーはアテナの父、ゼウスの数々の浮気や不実をテーマにしたもの。
 
 
アテナはその技術を認めながらも、その作品を見て激怒。(それはそうでしょうね)そのタペストリーを壊して、アラクネを打ちすえます。
 
 
結局アラクネは自ら首を吊って自殺してしまいました。
 
 
アテナはそんなアラクネを、クモに化えて、命を与えたという話。
 
 
まさにこのブルジョアの作品の下敷きになったような寓話ですね。
 
 
 
浮気ばかりしている主神ゼウス。そんなことを表に出して女神アテナと織物勝負をするアラクネ。
 
 
 
もう少し違うテーマを選べばって普通は思いますが、、、そこはアラクネの心意気。
 
 
 
 
この話はブルジョアにとっては神話の上のこととは思えなかったでしょうね。
 
 
 
そんなアラクネとお母さんを重ねて、クモの姿をお母さんに見立てた作品のような気がしてなりません。
 
 
 
 
 
 
 
マドリードのプラド美術館にこの話をテーマにしたベラスケスの作品があります。
 
 
タイトルは《アラクネの寓話》。もともとは《織女たち》という名前で知られていた作品。
 
 
やはりプラド美術館にある、彼の最高傑作《ラス・メニーナス》に並ぶ傑作とも言われている作品です。
 
 
 
 
気高い《ママン》の姿が、世界中からやってくる人や物や情報を迎えてくれる。六本木ヒルズ。
 
 
今度、森美術館に行くときも迎えてくれるでしょうね。