松山しげき これは人間ですか 展
昨年末、2023年12月26日に、終了して展覧会ですが、、、、
とても面白かったのでご紹介。
場所は銀座シックスの蔦屋書店です。
●展覧会案内看板
●展覧会風景
■松山しげきさん
1998年よりイラストレーターとしてアート活動を始めた松山さん。
2011年からは本格的にアーティストとして活動をされています。
国内外で絵画のみならず、いろいろなジャンルの作品を発表されているとのこと。
代表作の《Portrait of dazzle》。
インターネット上にある人の顔の目だけを使用し、他は全くべつの輪郭を作り出し、白と黒のストライプで人の顔を表して、インターネット上の人間の匿名性を表現しているようです。
タイトルの「これは⼈間ですか?」。
これは、ネット上で聞く、人のように振る舞う「ボット」のことを暗喩しているそうです。
●《Clipping Goya》
スペインの画家、ゴヤの《マドリード、1805年5月3日》をモチーフにした作品。
元のゴヤの作品は、19世紀初め、ナポレオンのスペイン占領の際、フランス軍が反乱を起こしたマドリード市民たちを銃殺刑にした場面を描いたもの。
殺されるマドリードの市民たちは顔などもはっきり描かれているのですが、フランス軍の兵士たちの姿は顔もはっきりと描かれてなく、この殺害する兵士たちには匿名性がもともとあった作品。
これを、松山さんは、インターネット上で人のように振る舞う「ボット」の存在と二重写しにして、作品にしています。
制作にあたって、松山さんはChatGPTとの会話を重ねて、アイデアを練り上げたとのこと。
会場にはその会話を記録したペーパーがおいてあり、それを読むと、この銃殺するフランス軍の兵士だけを、ストライプの輪郭で描くことで、何かわからないものから、理由もわからないまま攻撃される、インターネットの匿名性や危険性が端的に表現されていることがわかります。
●《Clipping Louis David》
こちらは、フランス革命期の作家、ダヴィドの代表作。
《ホラティウス兄弟の誓い》を元の作品にしています。
この作品の舞台は、古代ローマ時代。
彼ら3人の兄弟は、他の都市との紛争を解決するため、敵対する都市の3人の兄弟と決闘に赴くところを描いています。
この絵には右側に3本の剣を持った父の姿が描かれています。
その父に向かって、ローマ式の敬礼をしているところなのです。
実はこの絵には、嘆き悲しむこの家族の女性たちの姿が描かれています。
彼女たちの1人は、相手のクリアトゥス兄弟の1人と婚約中。さらにもう1人はそのクリアトゥス家から嫁いできた嫁なのです。
つまりお互いにそれぞれの国のため、義理の兄弟同士で戦うわけですね。
戦いの結果は、相手のクリアトゥス兄弟は3人とも死亡。ホラティウス兄弟も1人を残して死んでしまいました。
国家のことが、個人や家族などの私的な幸せより、大切なものだということを描いた作品。
こんな政治的な絵。または戦争の悲劇の絵を元に、作家は誓いを立てる3人の兄弟をストライプの輪郭で描いています。
誓う父の姿もなく、政治や国家などに盲目的に従っていくと、いつの間にか悲劇が待っていることを、ネット社会の匿名性を含めて描いているのでしょうね。
他にも、ドラクロアの《民衆を導く自由の女神》のに描かれている死体の輪郭とかを描いた作品もあり、現代のネット社会の匿名性と危険性を考えさせてくれる展覧会でした。