白頭山大噴火 | アキグミ

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秋吉久美子オフィシャルブログ

最近、韓国映画にもハマってる。

夜中にこっそり(こっそりの必要もないけど)一本ずつ観てる。

とにかく気合が入ってるんだよね。

見てる方も気合いが入る。

「白頭山大噴火」は私好みの映画でした。

アクション映画、ディスアスターもの、と言ってしまえは、観るものの鼻先で価値が小さくなる映画だ。


中国、北朝鮮の国境にある富士山のような

白頭山が4段階の噴火をする!!という自然の脅威のもと、最悪の事態を防ぐ為に、小さな人間達の精一杯の知恵と行動が交差する。

あり得る、とか、あり得ない、で観るべきではない、と思う。そんなことはどうでもいい。現にあり得ないことばかりが起こる昨今、そして人間の歴史は何を仕出かすか、分かったものではない。


この映画は観ている間はアクション映画、

観終わって24時間以内に徐々に印象を変え、コアな部分での終末感を意識させる。

韓国の兵士から渡される酸っぱ甘いグミキャンディ(きっと)を味わう北の工作員、イ.ビョンホン。

国を裏切り、妻に裏切られ、長年牢獄に繋がれた彼は、

核爆弾によって白頭山大噴火のストレスアウトをするという、韓国の無謀な計画に組み入れられる。

が、兎にも角にも顔さえ忘れた娘を探し、やっと出会う、、。

PTSDで口が利けなくなった娘に渡すグミキャンディ。

北朝鮮にも韓国にも居場所の無い彼は、

共に行動した敵味方さえ分からなくなった韓国側のリーダー、ハ.ジョンウを逃れさせ、白頭山の坑道の奥深く、スイッチの入った核爆弾にもたれ、死んでいく。

作戦は成功した。

イ.ビョンホンが死の間際に、例のグミキャンディを口に含み、微笑んで言う「甘い」は、フランスのエスプリ、ジャンポール.ベルモンドの「気狂いピエロ」のラストシーンを彷彿とさせる。

頭から逃れられない主人公は頭を爆破する。ゴダール特集を名画座で観た数十年前、

私の頭もぶっ飛んだ。

犠牲的ヒーロー、世界で一番カッコいい!をやれちゃって憚らないイ.ビョンホンもさることながら、

24時間後には、(私の脈絡の中で)感傷に閉じ込められた狂気の男から殉教者へと変容する。

一方、日常を取り戻した韓国では、ハ.ジョンウ、妻、そして、彼らの赤ちゃん、イ.ビョンホンから託された少女の、ささやかで和やかな食卓がある。

その日常の大事さこそ人類にとって、切に必要なものに違いない。

まさに、分裂も嵐も破壊も乗り越えて愛が残る、のかなぁと、希望を持たせてくれる終わり方だ。


そのグミキャンディは、非常に酸っぱくて甘い。未熟、危機、試練、真実へと導くプロセスの象徴でもあるような。

私としては、細部に神の宿る映画だと思った。