彼こそ紛れもない天才だったと思う


小学校の頃、近所のおばちゃんが録音してくれたテープに『街路樹』と言う曲があった

わずか10歳になるかならないかくらいのオレは

何に惹かれたかこの曲をヘビーローテしてた


なんとも言えないしゃがれた声で力いっぱいに歌う彼の歌声が幼いながらに心の奥の銀線に触れるような切なくもあり圧倒もされていた様に記憶している


中学に上がると兄弟から登竜門だと言わんばかりに尾崎のアルバムをガンガン聞かされた


彼の歌の世界そのものの様な毎日を過ごしていた俺には神に思えた


盗んだバイクで

タバコをふかし

そのバイクで好きな娘の家の前を通り

冬は温かい缶コーヒーを片手に

仲間とたむろした


唯一の心の拠り所のような

思っている事や過ごしている毎日が決して間違いでは無いことを俺に示してくれた


高校に入るとギターを手に取り駅前で歌い出した

みんなゆずや19なんかを歌うけど

オレは尾崎をよく歌っていた


こう振り返ると

俺の少年時代、青年時代は尾崎とともにあった

もうだいぶ前に亡くなっているのに

こんなにも人に影響を与えるなんて

とんでもない偉人だと思っていた


しかし20代も半ばに入ると

そんなことを忘れてしまったように

尾崎か好きなことすら人にあまり言えない自分がいた

正直に言うのが恥ずかしいと思っていた

真っ直ぐな歌詞に全身で歌う彼のスタイルそのものが段々脂っこく感じていた自分もどっかにいた


そしてそのまま月日は流れ

40過ぎた今

車で何の気なしに尾崎をかけてみた

街路樹を聴いた

今の自分からしたら生きていた時の彼はクソガキだろう

クソガキなのに・・・

なんて良い歌を歌うんだ

涙が出てきた


彼は年齢も時代も超越する

間違いなく稀代の天才シンガーだと思った

あんな短い人生であれだけ多くの名曲を世に送り出し、人々の心を震えさせた


是非、生きていて欲しかった

生きていたらどんだけの名曲が世に生まれたのかを思うと悲しくてやりきれない


メロディーセンスも

世界観も

出てくる言葉(歌詞)も

あのしゃがれた声も

全身全霊で歌うステージパフォーマンスも

どれを取っても

最強だ


あんなすごいシンガーは彼を置いて他にはいない


ありがとう


これからも尾崎の曲とともに