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三橋氏は私がブログを始めるきっかけになった人で、彼のブログや著作からは多くのことを学ばせてもらった。また廣宮氏のデビュー作『国債を刷れ!』という、当時の私には「いったい何を考えているのだ」と思わせるタイトルの本を知ったのも三橋ブログのコメント欄だった。
この両者は廣宮氏の第2作『さらば、デフレ不況』の監修を三橋氏が引き受けたり、廣宮氏が三橋氏の参院選兆戦を応援したりの関係だったようだ。選挙直前に大々的に開催された三橋氏の出版記念パーティーに、廣宮氏の著作も持って行ってサインをいただいたこともある。
廣宮氏がはじめて世間に示した「国家のバランスシート」は、それまでの私たちの「国の借金」の思いこみを一気にひっくり返す画期的なものだった。三橋氏がそれをグラフ化して分かりやすく解説したことでネットから政界までその正しい認識が広まったわけで、これだけでも両者の功績は非常に大きいと思う。
ただ、その後の両者の著作の量、ネットやマスメディアへの露出は対照的で、世間に対する影響度にも大きく差がついた。考え方の出発点は極めて似ていた二人だが、その後の歩みはずいぶん違っていたようである。三橋氏はいまや有名人だが、廣宮氏はネットを中心に知る人ぞ知るというところだろうか。
最近、突如ブログランキングの上位に躍り出た行橋市議会議員の小坪しんや氏が、渡邉哲也氏もを加えた三名の方について興味深い考察をしている。もっとも記事の主役は廣宮氏で、心理学を経済に持ち込んだ画期的な経済書『日本経済のミステリーは心理学で解ける』の紹介を兼ねている。
小坪しんやのホームページから
【保守に必要なもの】廣宮孝信の思考パターン
2014年10月8日
三人とそれぞれ交流があるという筆者の話は多岐にわたっているので、特に興味を引いた部分だけ紹介したい。小坪氏は、まず、この三名の功績について次のように評している。
尚、引用部の太字強調はブログ主による。
尚、引用部の太字強調はブログ主による。
(引用ここから)
三橋貴明、渡邊哲也、廣宮孝信、この三名をして「経済新御三家」などと評されたものだ。
私は、実はこの三名とそれぞれ友人だったりする。
いま振り返れば、それぞれの展開した論に対し
「ここはもっと、こうだ。」とか
「実は、こちらの観点も。」という意見も出せるだろう。
それほどにネットの経済への理解は進んだ。
それを兵士に例えれば、それほどに練度が向上した、ということだ。
その親にあたるのがこの三名、私はそう思っている。
当時、この三名が果たした功績は非常に大きい。
誰もいない中、完全な荒野をたがやしていった。
ゼロからのスタートだ。
このあたりの話と、その時、彼らを私が何をしていたかはそのうち語りたい。
(引用ここまで)
彼らの功績を具体的に挙げるとすれば、何と言っても「国の借金などでは、日本の財政は破綻しない」ことを明確に示したことだ。そして、その分かりやすさはマクロ経済とは縁のない人にも興味を持たせることになり、経済に関心を持つ人の数を飛躍的に増やした。
その後も彼らは選挙に出たりTPPの問題点を強く訴えたりしてきたが、これまでの特筆すべき功績といえば上記のようなことだろう。小坪氏はそのあたりを「誰もいない中、完全な荒野をたがやしていった。ゼロからのスタートだ」と絶賛しているが、全く同感である。
そして、面白いのがこの「経済御三家」についてその特色を述べている部分で、まず三橋氏については次のように記している。
<<三橋貴明>>
・著書の速度が異常に高速。
別分野のプロ作家と比較しても、恐ろしい速さ。
傍らでタイピングを見たことがあるが、カタカタカタッではなくガーーーーーーーッ!と音が連続する。
・わかりやすい。
イレギュラーな要因を排除しているようにも思え、危うさも感じる。
特に経済という分野は、イレギュラーの連続でもあるゆえ。
ただ「みなに発信する。」「知識の底上げ」をする意味では、これ以外の手段はありえない。
わかりやすさの功罪を論じる以前に、彼の功績は誰しもが認めるだろう。
・専門:日本国内
海外も語るが、あくまで日本国内を軸とした観点だと感じる。
(引用ここまで)
タイピングの早さと彼の議論の分かりやすさはリンクしていると思う。物事をシンプルに考えるから原稿も異常な高速で仕上がってゆくのだろう。彼の著作はたくさん持っているが、正直、座右に置いて読み返す本は多くない。意見に相違がみられる日下公人氏や上念司氏との対談などは読み返したが。
彼は安倍政権の誕生前からその経済政策を支持していたが、実際に公約通りに政策が進みだすと批判に転じた。真意は不明だが、そのシンプルな考えと現実の政策実行とのギャップが見えてきたことも関係があるのではないか。
例えば成長戦略について彼は「デフレ期にインフレ対策の成長戦略はダメ」と言うが、ミクロ政策の集合である成長戦略はそれほどシンプルではない。政権誕生を後押しした経済評論家としては、より突っ込んだ政策提言が求められるが、実務的になればなるほど「分かりやすさ」からは離れて行く。
彼は、そこに深入りすることを選ばず、TPP交渉参加や消費増税騒ぎをきっかけに、シンプルで分かりやすい批判に回ったのではないか。ただ、分かりやすさを意識するあまりか、かつての柔軟なものの見方が影をひそめ、批判ありきの決まり文句や決めつけが多くなったのは残念だ。
一方、廣宮氏については次のように書いている。
<<廣宮孝信>>
・奥手で、遅筆。
結果的に一番、割りを食う。
・よくも悪くも、優しい。
個人間では非常につきあいやすいが、それがビジネスの側面となるとデメリットにもなるだろう。
出版数が少ないのも、知名度のみならず出版社に筋を通し過ぎ、各社をまたぐ等をしなさすぎる、という面があるのではないか。
・専門は、米国経済と米国の政治情勢
我が国の経済は、同盟国である米国経済に大きく影響を受ける。
米国経済においては、彼がもっとも詳しいと思う。国内において、私の知る限り誰よりも。
他国の経済を論じるにあたり、当然その国の政治情勢を知る必要がある。
この背景の積み重ねが最も凄まじいのが廣宮くん。
邦訳された記事のみならず、現地のソースを直接、読み解く。
覚える背景資料は大量にある、日本だと「自民がどう」「民主がこう」「次世代がこう」「維新がどう」と。
米国においてもそれらを踏まえる、ということだ。
簡単ではなく、量は膨大だ。
外務省には当然負けるだろうが、比較対象に外務省を置いてよいレベル。
「米国経済を語る日本の国会議員」であっても、ここまで背景を集積している者はいないと思う。
彼はそれをやる。
米国経済を専門とした国会議員と比較しても、恐らく軍配は廣宮くんにあがる。
その姿は、まるで僧侶。
悟りでも開いてそうな感じだ。
(引用ここまで)
廣宮氏は会計学は独学だが大学院で電子工学の研究生活を送った経験があり、データの扱い方やじっくり考える感じはいかにも研究者らしい。研究論文を書くためには資料の読み込みやデータの分析などに多くの労力が必要だ。彼がその姿勢なら遅筆になるのは当然と言えば当然だ。
また、彼は以前からイギリスのブレア首相がとった「第三の道」を評価している。これは「ゆりかごから墓場まで」の福祉重視主義とサッチャーがとった新自由主義的な政策のいいところ取りの考えともいえ、デフレ・インフレ、TPPに賛成か反対かなどと、すっぱりと切り分ける三橋氏と対照的だ。
廣宮氏はTPPに関する著作も出してその問題点を指摘してきたが、小坪氏がほめるようにその後の内外の情報を細かくウォッチしながら交渉が簡単にはまとまらないだろうと指摘している。彼はこのように、単に反対か賛成かではなく、常に賛成と反対の両方の立場から事実を見極めようとしてきた。
ただ、その後、反財政破綻論の集大成とも言えそうな『国の借金アッと驚く新常識』を出版したあと、長い間ブログの更新も滞る時期が続いていた。そして、今回、経済に心理学の視点を取り入れようとする新著を発表したのである。
小坪氏は廣宮、三橋両氏を次のように比較している。
(引用ここから)
奥手、遅筆とマイナスイメージの言葉で評しましたが、時間をかけ練り上げる分、彼の情勢分析とデータの質は、正直、三名の中でも群を抜いている。
いまの「日本経済が破綻しない理由」を、わかりやすく発信したのは三橋さんだけど、その理論を組み上げデータで補完していった当事者は廣宮くんだと思ってる。
(私が勝手にそう思っているだけだけど。)
わかりやすさで行けば、負ける。
真に分析を試みれば、調査分析に時間はかかるし、イレギュラーをも内包した理論とはわかりやすさを犠牲にせねばならないからだ。
ちょっとだけ中級者向けにならざるを得ない。
(引用ここまで)
これも全く同感である。
そして、小坪氏は廣宮氏の最新の著作である『日本経済のミステリーは心理学で解ける』を紹介しているのだが、私には本の内容を簡単に要約することは無理だ。経済に心理学を持ち込んだからこんなことがすっきりと説明できたとか、新しい理論が生まれたというわけではないのだ。
小坪氏は、一方に偏っていない両論併記ともいうべき廣宮氏の思考パターンがいまの保守に一番必要としているが、この著作のポイントはまさにそこだ。廣宮氏は経済を既存の経済学だけで説明しようとするから信奉する理論が違う者同士の対立が生まれると考えている。
尚、この本について下記の拙エントリでも紹介しているのでよかったらごらんいただきたい。
経済は経済学だけでは説明できない!?
http://ameblo.jp/akiran1969/entry-11937149629.html
http://ameblo.jp/akiran1969/entry-11937149629.html
今回の著作は「国家のバランスシート」のようにひと目で分かるものではない。しかし、だれも挑戦しなかった経済と社会心理に切り込んだ事は画期的で、この視点を持つ人、関心を持つ人が是非増えてほしい。これまでのように分かりやすい解説を鵜呑みにしているだけでは現実の経済について行けないと思う。
(以上)