”国土強靭派”と”リフレ派”のどこが違う? | 猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

安倍晋三応援ブログです。
やっと明るい未来を語る政治家が総理大臣になりました。しかし、闘いはまだまだこれから。子や孫が希望を持てる国になることを願うおやじです。

人気ブログランキングに参加しています
応援をよろしくお願いします。

 
人気ブログランキングへ

昨日もご紹介した廣宮孝信氏の最新刊『日本経済のミステリーは心理学で解ける』の「はじめに」は[”国土強靭派”VS”リフレ派”――経済論の矛盾は、乗り越えられるか?]という問いかけから始まる。そして、筆者はこの両派には次のような対立軸があると指摘する。


・政府はもっと景気に介入すべきだVSいや、政府は何もすべきではない、景気対策は日銀の金融緩和だけにするべきだ。

・公共工事をもっとやるべきだVS公共工事は有害無益だ。
(『日本経済のミステリーは心理学で解ける』2ページ)


この対立軸の設定は双方の実際の主張とはかなり違うと思うが、それは後で述べることとする。
筆者の念頭にあるのは、月刊誌『VOICE』の二〇一四年月号に「国土強靭派」の藤井聡氏によるリフレ派に対する批判が掲載され、それに「リフレ派」の原田秦氏が反論したことに端を発する論争だ。

このように対立する考えを頭から否定せずにひとまず両方とも「正しい」として受入れ、そこから第三の道を見つけようとするのが廣宮氏の考え方だ(と思う)。つまり「いいとこどり」をしようということだが、その為には独自の視点も必要であり、単に足して二で割るということではない。

そして、筆者が上記の対立点を吟味、整理し、両者の考えを統合した結果が次のようなものだ。
(尚、ブログ主は「○○派」と一括りにすると一人の発信を全体の考えのように非難し合うことにつながるので避けてきたが、話の都合上、「国土強靭派」「リフレ派」とする)


「日銀の金融緩和を続けつつ、国の借金が続く限り緊急に必要な公共工事を行い、その中において日本経済を自立成長軌道に復帰させればよい」
(同 3ページ)


筆者はこれが「国土強靭派」と「リフレ派」の考えを統合したものだとしているが、これこそまさに金融政策と財政政策のパッケージであり、アベノミクスの第一、第二の矢そのものだ。だから以前は、両派の主要な論者のなかにこの政策に反対する人は殆んどいなかったと思う。

確かに、どちらが主か従かの微妙な違いはあったように思うが、一方を否定することはなかったはずだ。その政策は「国土強靭派」の三橋貴明氏と「リフレ派」の上念司氏が対談本『「日本経済ダメ論」のウソ』で語りあった政策そのものだったから、当たり前のことだった。

三橋貴明  (著), 上念司  (著)』




この対談で二人は、財政出動と金融緩和は同時に進めるべきなどと語り合っている。ここでもどちらを主とし、どちらを従にするするかで微妙にニュアンスの違いは感じるが、廣宮氏の考え方そのままに両者の考えがうまく混ざり合ったいい対談になっている

さて、廣宮氏は「リフレ派」は「金融緩和だけにするべきだ。公共工事は有害無益だ」と主張していると述べ、以前は私もそれに近いイメージを持っていたがその認識は正しくない。リフレ派を名乗る人の中にそんな人がいるかもしれないが、上念氏たちリフレ派は公共工事も財政政策も否定していない。

彼らは金融政策と財政政策のパッケージを主張し、それを取り入れたアベノミクスを概ね支持しているのである。ただ、震災復興、国土強靭化、東京オリンピックの公共工事をこなすには、現在の土木・建築の供給力が不十分であるという現実がそこに立ちはだかった

だから、リフレ派は当面の補正予算などの財政政策として公共事業より減税や交付金の方がいいと、現実的な提案をし始めた。金融緩和だけをやればいいとは言っていないし、公共事業を否定しているわけでもないのである。

つまり、廣宮氏の提唱する「統合案」で一貫しているのだが、現状を踏まえれば公共事業以外の財政政策も必要だと主張しているのである。だから、「国土強靭派」としても、その現状を踏まえたうえで、防災、減災をどう進めたらいいのか考えなければならない。

国土強靭化を進めるために絶対に必要なことは、やるべきことの優先順位づけとそれを実行するための課題や対応策を明確にすることであり、予算とはそのような具体策についてくるものである。そこが明確になればどこに重点を置いて供給制約の解消に取り組むのかも絞り込める。

焦点が絞れれば課題の解消はより容易になるし、予算も付けやすくなる。そういうことを明確にせずに予算の総枠だけ増やせと言っても説得力を欠き、公共事業=悪と思いこんでいる世論を納得させることは難しい。ところが、誰からもそんな提案は出てこない。

私は、藤井参与が座長を務める「ナショナル・レジリエンス(防災・減災)懇談会」あたりからそういう提案が出てくるのかと思っていたが、どうもそういう動きはないようだ。彼は予算の増額は主張するが、国土強靭化担当の内閣官房参与として、その辺りをどう考えているのかが見えてこない。

国土強靭派は、政府が土木建設の人材不足を補うために一時的に外国人実習生の在留条件緩和を検討し始めるとそれを移民政策だと批判した。しかし、出てきた代案は生活保護者やニートの活用といった話にならないものだった。そして、現実的な提案がないまま今度は金融緩和まで否定し始めた。

リフレ派は基本的に考え方を変えずに、公共事業に供給制約などの現実にあわせた政策を主張している。一方、国土強靭派は変化する現実に対して主張の方を変えてきている。そして最近は、国土強靭化ではなく、単に公共事業費をより多く獲得することが目的化しているように見えてしまう

土木・建設の供給制約をいかに解消してゆくかは震災復興、国土強靭化、東京オリンピックを抱える我が国の大きな課題の一つだ。
国土強靭派が攻めるべきはリフレ派ではなく、そのような課題のほうだと思う。

(以上)

人気ブログランキングに参加しています
応援をよろしくお願いします。

 
人気ブログランキングへ