恐怖Hello注意報 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

ぐおうーぱたぱた、
ぐおおーん、
ばたばた、
ぐぐおおおおおーん、
べりっ、
からからからから、
ぎゃおおおおーん、
ばりばりっ、
つとととんとんぼろっ、
ばおーう、
ぐしょっ、
ばおばおーう、
がばばっ、
どすっ。

ううむ、見事に生活感をリアルに描きつくした、オバンギャルどう? 
じゃない、アバンギャルドな詩だな。
オレはふとんのなかで震えていた。
魑魅魍魎が跋扈している。
精霊たちが荒れ狂っている。
ラスト・エスキモーには世界の終わりがやってきたように思えたのだ。
おそるおそるテレビをつけると、
……映らない。
水も出ないし、
テレビも映らない。
もはやテレビ局がある首都も壊滅したか。
水を汲みに外へでた瞬間、一面の雪が空中に舞い、体が押し戻される。
いつのまに家がトルネードに巻き上げられ、アラスカに不時着してしまったのか。
冒頭の不吉なオノマトペー(擬音)に、「ばりばりっ」という音があった。
あの音は……?
ハレーダビットソンの赤い革ジャンを着てバイクにまたがり、雪道を200キロで飛ばす「バリバリ伝説」ではなく、
アロハシャツで、ちゃくちゃくちゃくちゃく、ぱおーん、けちゃっくけちゃっくの「バリバリ伝説」でもない。
あの音は……?
人類が滅亡した日光砂漠にさびついた文明のかけらが不時着しているではないか!
オレは顔面蒼白になり、あわててアルミはしごで屋根へとかけあがった。
文明の象徴であるエッフェル塔や東京タワーと並び賞される我が家のテレビアンテナが無残にも屋根に倒れていた。
0802アンテナ倒壊

赤くさびついた屋根に水色の部分はオレが1年前、ブルーシートで屋根を修復した跡だ。さびだらけの針金が断ち切られ、風に打ち震えているのがやけにもの寂しい。
これじゃ……映らない。
水も出ない、
テレビも映らない。
屋根から眺めおろす雪景色のなかに、薬屋の看板や、千切れたのぼりや色とりどりのゴミがのたうちまわっていた。
ラスト・エスキモーには世界の終わりがやってきたように思えたのだ。
ぶおんっと強風がオレの胸倉を押し、霜のおりた屋根で右足を滑らし、うしろへひっくり返った。
ま、まさか!
0807屋根が飛ぶ

……飛んだ。
東北方向の屋根の角が、
「ばりばりにはがされ、どっかに飛んでいった伝説」だ。
昨日の夜、オレは「スワンちゃん」と名づけた21世紀の「ウォーター・ウォーズ」をサバイバルする大発明である、かさの先っちょを切ってバケツに雨水を収集するテクノロジーの完成に雨乞い踊りを舞っていたのに。
0802雨水収集器東京特許許可局不許可「スワンちゃん」

また雨漏りの恐怖が襲いかかってくる。
もはや「スワンちゃん」は、「泣きっ面にションベンスワンちゃん」に変わってしまった。
水も出ない、
テレビも映らない。
屋根もない。
オレはラスト・へレンケラーin Nkkoか!
三重苦をあたえてどうする! 神よ。
メールで「ニュースで日光の強風が報道されてました」というのを知った。強風で木が倒れ、家が倒壊したという。
築80年のマイスイートホームよ、
祖父母と両親と兄弟で暮らした思い出の我が家よ、
家賃一万円だけど修理に数十万もかけた日光城よ、
どうかオレがB’sやハリーポッターやピカソになるまで生きのびてください。
そのあかつきにはオレが「サンシャインNIKKO70」階建てのマンションを建てますから。
もちろん屋上には鳥居を建ててあたなを記念館としてそのまま残し、3000円の入場料を取りながらも、屋根は280円のシリコンでオレがアルミはしごで昇って直しつづけますから。
ご近所の高緑さんのご好意で(オレは高緑さんのおじいちゃんが亡くなったとき、組長を務めた)、外にある水道を使わせてもらえることになった。
大喜びで蛇口をひねったら、
……でない。
今日の寒さで凍ってしまったのだ。
そういえば、サリバン先生のサディズムに耐えながらへレンケラー女史が生命の力を振り絞るように最初に口にした悶絶の言葉は、
宇都宮オリオン通りにあるオレの高校の体育の橋本先生の実家である魚屋、
「魚太」じゃなく、
「ウ、ウオータ」
水をくれー!
(注:ペットボトルの郵送とかはお断りします。「人の不幸は蜜の味」とおもしろがってください。
From ラスト・へレンケラーin Nkko)