日光砂漠 | New 天の邪鬼日記

New 天の邪鬼日記

小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

怒涛の新潟ライブを終え18日の夜に日光へ帰ってきたのだが。
……出ない。
やっぱり出ない。
翌日業者さんを呼んで家の裏に埋まっている水道管に前の家からホースをつないで熱湯をかけてもらったが、出ない。
0802お湯かけ作戦お湯かけ大作戦

さらに翌日は市役所の水道課の人にきてもらった。
「メーターが動いてません。ということはとなりから5軒の空き家につづく水道管がぜんぶ凍っているようです。この20メートルの管は地下60センチに埋まっています。それをぜんぶ掘り返して溶かすとなると、20万円はかかるでしょう」
「ひょえー、20万なんてありませんよ!」
「では4月すぎまで待つしかないでしょう」
おーい、4月すぎって40日も水なしで暮らすのかよ。
アジアだって南米だってアフリカだって水は出たのに、この先進国日本においてうちだけが未開の部族になってしまった。
ラスト原始人in Nikkoである。
幸い大谷川(だいやがわ)が30メートルほどいったところに流れているので、水を汲みにいく。昔アフリカで頭に瓶をのせ遠くまで水を汲みにいく女性たちを見て「ご苦労なこった」とあわれんでいたが、今日はわが身である。
0802バケツ頭お、重い。

近所の雪をバケツに集めて、1日家の中で溶かし沸騰させてから砂を沈殿させて使う。
0802雪集め雪泥棒

オレはラストエスキモーin Nikkoかあっ!
いったい何の因果でオレにばっかりこんなおもしろい、じゃない、つらい苦難がふりかかってくるのだ。ううむ、そこは「神にえらばれし者」、いや「神におちょくられし者」としてこのレ・ミゼラブルを受け止めよう。
この文明ボケした日本で、いったいオレ以外にだれが水なしで40日間もサバイバルできよう。オレ以外にだれがトイレなしで生活できよう。
トイレは基本的に3メートル以内のあるものである。しかしオレは30メートルはなれた東武日光駅に走り、終電がでたばっかりで駅が閉まったときは、さらに60メートルはなれたJR日光駅にかけこみ、さらにJRの終電が出てしまったときには、また50メートル走って夜中の12時までやってるコインランドリーへ飛び込む。さらにそこも閉まるとコンビニへいくのだが、ただで使わせてもらうのもなんなので、ついつい1000円くらい買い物をしてしまう。マレーシアでも有料トイレは10円くらいだったのに、日本のトイレは高いなあ。
はじめはそこらへんで立ちションしていたが同じところにばっかりしていると、犬に嗅ぎつけられ「おれのテリトリーを犯すな」と吠えられてしまう。いまやオレは犬畜生とさえ縄張り争うをする獣に堕ちてしまった。
明日北海道からとーるがやってきて10日間連続のレコーディング合宿である。
「alone」「alone2」の最新機材での録り直し、そしてニューアルバム「alone4」を完成させるという苛酷なミッションに挑戦する。
はたしてぼんぼん育ちの甘栗野郎とーるがこの熾烈な環境に耐え、ラスト2エスキモーin Nikkoになれるか?
犬畜生にまで身を落としてまで音楽をつくれるか?
もしかすると神はレコーディングにそなえてオレたちの野性本能を目覚めさせるために、この試練を用意してくれたのかもしれぬ。
となんでも都合よく解釈するしかない。そうやってオレはあらゆる困難を味方につけてきた。
このサバイバル・レコーディングは伝説になる。