キリング・フィールド | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

カンボジアの人々は明るい。
リキシャマンもおばちゃんも子供も人なつっこい笑顔で話しかけてくる。
こんな笑顔を見ると、あの悪夢が幻のようだ。
ベトナム戦争に巻き込まれたカンボジアは、とんでもない怪物をつくりだしてしまった。
ポル・ポトである。
共産主義を標榜するポル・ポトは、都市の住民を農村の強制労働に駆り立て、自らに反対する者を徹底的に粛清していった。知識人や技術者をはじめ、女性や子供を問わず、密告によって濡れ衣を着せられた無実の国民を大量殺戮していく。
1975年から1979年までのたった4年間で、なんと国民の3分の1を殺したのである。
これはヒットラーやスターリンさえおよびもつかない人類史上最悪の無差別殺人だ。
プノンペン市内にある「トゥール・スレーン」博物館は、もと学校を監獄にしていたところだ。
教室に廃材や粗悪なレンガで独房がつくられ、あらゆる拷問がおこなわれた。床にはいくら拭いても消えない血痕が生々しく残っている。
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展示されている膨大な犠牲者たちの顔写真に圧倒される。彼らが目で訴えかけてくる無言の恐怖に立ち竦むのだ。大人だけでなく、女性も、そして2000人以上の子供まで収容されていた。
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ここからみんな目隠しをされ、トラックにのせられる。南西へ12キロほどいった「キリング・フィールド」には、毎日300人が運び込まれ、すぐ殺された。殺人機械と化した兵士は弾丸を節約するため、棍棒で頭を殴って穴に突き落とした。まさに「殺人機械」と化したのだ。
1988年に建てられた仏塔が中央にそびえ、そのなかには9000もの頭蓋骨が安置されている。
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頭蓋骨には棍棒で殴られた痕が残っている。
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そこらじゅうに残された穴のまわりには衣服や骨のかけらがいまだに散らばっていて、わずか20数年しかたっていないという現実に愕然とさせられるのだ。
日本がカンボジアの民主選挙を監視するために自衛隊を送った(1993年)のも記憶に新しい。
カンボジア人から聞いた話だが、この「キリング・フィールド」はなんと日本企業「JC」が2005年にカンボジア政府から内密に買い取ったという。この入場料は日本企業の利益になるのだ。これは犠牲者の親族やカンボジア国民から大きな怒りを買った。日本国内のマスコミは報道しないが、世界中で日本企業はこのような破廉恥な行為をして利益を上げている。
もしかするときみもカンボジアの悲劇は遠くの国で起こった特殊なできごとで、日本で平和に暮らす自分たちには関係ないと思うかもしれない。
ここでオレには死者たちのこんな声が聞こえる。
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「すべてはつがっている」と。

オレたちは学ぶために生まれてきたのに、大人になるとみんなその使命を放棄してまう。ここが想像力の分かれ道なんだ。思考のボーダーを超え、曇りない目で世界を見てごらん。
これだけの命が自らを犠牲にしてまで伝えたかったメッセージはたんなる「戦争反対」や「平和万歳」じゃないはずだ。
「この悲劇をくりかえしてはならない」などと平和運動の人々は言う。
とまれ。
この悲劇はオレたちの日常で今もくりかえされているではないか。
たとえば中学や高校ではクラスに独裁者とまではいかなくても発言権の強いやつがいただろう。そいつに迎合するため、誰かの悪口を言ったことはないかい? 誰かをチクったことはないかい? 誰かを仲間はずれにしたことはないかい? 誰かを見下したことはないかい?
職場でいやなやつはいないかい? 自分に反対するやつを消えてくれればいいと思ったことはないかい? 自分が人事課長になったら移動させたいやつはいないかい? もし憎いやつを処罰できる権力をきみがもっていたら?
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この延長線上でポル・ポトはきみを待っている。
平和な日常のなかで、誰でもポル・ポトになれるし、なっているんだ。
それは自分とちがうものを軽蔑し、排斥すること。
単一のものさしで人を判断することだ。
日本もまた狂気のなかにいることに気づいてほしい。
オレたちは知らず知らずのうちに国やマスコミが操る情報に汚染されている。

一人旅をつづけていると、さまざまなことを考える。
人と会話をしないぶん、自分と会話するんだ。ダライラマがこう言っていた。「一日にほんの少しでも自分と会話する時間をつくりなさい」と。
しかし忙しい日常のなかにいると自分と会話する時間がほとんどもてない。そしてみんな自分を忘れていく。外側の情報ばかり信じてしまう。まるでポル・ポトの狂気に洗脳された兵士のように。

すべての知恵はすべて自分自身のなかにあるんだ。

だからオレはみんなに旅をしてほしい。
団体旅行や仲良し旅行じゃなく、
一人旅を。
本当の自分自身に出会う旅を。
さまざまな体験を積み、
多様な価値観を身につけ、
情報に左右されず、
一切の権威に従わず、
自らの足で歩き、
自分自身の知恵で考えることを身につけてほしい。
人や自らの魂を殺す「機械」にならないためにも。
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