アディオス大介 | New 天の邪鬼日記

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小説家、画家、ミュージシャンとして活躍するAKIRAの言葉が、君の人生を変える。

 大介が日光を去った。
 5月4日に盛大なお笑い歓迎をして以来、約1ヵ月の滞在である。
 ほんとは3日ていどの滞在予定だったが、改装中であるヤスコちゃんの店でオレとタケちゃんがミニライブをやったとき、かばん持ちに大介を連れていき、ついでに大介のTシャツを宣伝したのがはじまりだった。
 その場で何件かTシャツの注文がはいり、翌日にはヤスコちゃんの大英断がくだされたのだ。
 新しくオープンするカフェの壁一面に壁画を描いてくれとの注文だった。
 全長20メートル以上はある壁面に思いっきり好きな絵が描ける。大介は大喜びでカフェに泊まりこみ、樹木をモチーフにした抽象画を描いた。
 大介の絵は恐ろしく進化している。以前の抽象線画から具象を織り交ぜた有機的なフィギャーがダイナミックにうねる新しい画風を獲得したのだ。
0606大介カッファ

 大介の滞在中、オレは弁当を運び、激うまラーメン「蔵八」と「ガスト」をおごり、洋食「カタリーナ」の名物「若鶏のキエフ」や餃子の名店「正嗣(まさし)」、回転寿司やトンカツなどをワリカンで食いにいった。
 そして昨日は、金のはいった大介に高級洋食の店「明治の館」でおごってもらったのだ。うう、はっきり言って、ラーメンとガストを足したより高いメシだったぞ。
 極貧の旅人におごってもらい、部屋や風呂まで掃除してもらい、しかも屋根貼りまでやらせて、かたじけなき幸せであった。
 大介が滞在中はなんだかんだと毎日のように会い、楽しかったなあ。
 今日の午前中、大介はヤスコちゃん夫婦の車で出発点の今市まで送ってもらう。
 35キロもあるリュックを担ぎ、鬼怒川にむかう街道を歩きだした。
 沖縄から日本列島を3分の2踏破し、残り3分の1を北海道へむかって歩く旅がはじまった。
 「犀の角」というより「亀の甲羅」のようなバックパックを背負って小さくなる大介にオレたちは手を振る。
 ううむ、さすがに泣きはしないが、去ってゆく旅人の背中には哀愁がある。
0606大介去る

 いつもいた誰かをなくすと、
 心にほころびができるのだ。

 雨にも負けて、
 風にも負けて、
 雪にも夏の暑さにも負けて、
 やつはたったひとり歩きつづける。
 アディオス・アミーゴ、
 地球のどこかでまた会おう!

 ……雨がくるな。
 大介が去ったあと、ホームセンターで防水シートを買い。
 オレはひとりで屋根のほころびを直した。
0606屋根