くだらねえ常識
50年後のボクたちは
割と有名な原作モノで雇われ監督としてアキンが撮った作品だが、アキンが惚れ込むのも分るって位にアキン映画のメッセージに重なった内容です。この作品は2010年代初頭に撮るはずだったが原作の問題があって割と最近になって撮ったらしい。ここ最近のアキン作品はヘイト感情に閉ざされ腐ってゆくドイツ社会の薄汚さに闇落ちしてゆく傾向があったが久しぶりにアキン節とでも云うべき明るい青春コメディでした。ただ今作でやろうとしてる事は露骨に初期作品『太陽に恋して』に重なります。いわゆる陰キャな主人公がヤバい転校生に出会い一緒に旅をする事で世界に開かれてゆくという内容。旅先でイカれたチェコ女に出会ったり沼を車で抜けようとしたり既視感のあるシーンが続きます。
この作品の原題は"チック"というヤバい転校生の愛称がそのまま付いてます。どうヤバいのかと云えば度胸があって頭も良いがドイツ社会の常識なんてクソ喰らえって感じの我が道を行くアジア系ロシア人。本人はユダヤ系ロマなんて名乗ったりもしてるが明らかにモンゴル系の顔立ちです。こいつが誰にも媚びない態度で我が道を行くものだからクラスではハブられ陰キャの主人公と二人パーティに呼んで貰えないハブられ仲間としてつるみ始めます。だが彼からしてみればクラスで上手くやってる奴なんて下らねえクソガキ。その視座が旅の中で主人公に共有される。つまり無意味な常識の外側を知るのです。
それこそ日本企業の多くが無能なのはブルシットジョブに時間を奪われてるからであり本質を突き詰める余裕を自ら放棄している。グローバルマジョリティ側の企業はもっとドラスティックでプラグマティックに必要な業務を突き詰めているので現在の西側ゴキブリセブン(G7)のような無能国家の土人蛮族は追い抜かれ置き去りにされるのです。その視座を東欧の混沌の中から獲得するって方向性は正にアキン作品の底流を貫くテーマ性です。それこそトルコ系アイデンティティがあるからこそ西側の優秀さも愚かさも客観的に見えているからこそ紡げる物語。昔アランパーカーがオリバーストーンと組んだゲイ映画の名作『ミットナイトエクスプレス』では麻薬所持で捕まったバカな米国人が「ここでは全く常識が通用しない」と嘆いていたが、その常識自体が腐れ切ったクズの妄想なんだよ。つまり先進国ヅラしたクズどもは東側から学べって事。自分がいかに下らないか気付くだろうから。