映画『完全なる飼育7』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

貧困を覆い隠すオタク文化

 

 

完全なる飼育 メイド、for you

 

かつて新藤×和田で始めた拉致監禁シリーズに深作Jrも挑戦。元祖誘拐犯たる竹中直人は今作では犯人が務めるネットカフェのオーナーとして出演。題名からも分る通り今作の舞台は秋葉原でいかにも健太作品らしく時代性を反映した面も多い。ヒロインがメイド喫茶勤務でネットカフェ難民ギリギリの貧しい失業者たちやリストラ親父。一般的にオタク文化とされる中で貧困にあえぐ若者たちという時代性を反映した現代のロマンポルノとでも呼ぶべき内容。

 

一般的にアニメやゲームを大量消費してる連中がオタクと呼ばれる変な傾向があるけど平成初期の映画オタクとしては奴らをオタクとは認めたくない。なぜならアニメやゲームがここまで文化として認められた時代にアニメやゲームにハマる連中は単なる皆がやっている事を追いかけるだけのミーハーだからだ。PVやCMや映画の仕事よりアニメやゲームの仕事の方が大量に入って来る今のクリエイティヴ業界の実感からすると、そっちの方文化の中心になってしまった。むしろ今の時代だったら絵画等のオールドメディアにハマる方がよっぽどオタクと云える。アイドルオタクとかにしても男性が女性に興味を持つのは当然の生理であり、それはオタクと呼ぶにはあまりに大衆迎合的。本来電子工作オタクや数学オタクのように知的好奇心を追求してノーベル賞撮るような連中こそオタクと名乗るべき。マジョリティの嫉妬による迫害を覚悟して自らの道を歩む有能なマイノリティこそオタクなのだ。

 

三枚目のキモいリストラ親父が警察無線を盗聴して警察より先に主人公たちを襲う所とかあからさまに時間軸おかしいだろってなご都合主義がやたらと目立つ内容ではあったけど、やはり普通に客が入っているネットカフェの一室に監禁という簡単に見つかりそうな設定はなかなかスリリング。イマイチ彼女が誘拐犯に心を開くきっかけは分り辛かったが、ヒロインのバックにも貧困という闇がある事だけで結構説得力を持ってしまう。まあ基本的にコスプレのソフトSMプレーに導くための御都合主義のポルノというジャンルの仕事なのだろうけど、なかなか誘拐サスペンスとして楽しめる内容ではあった。