映画『桜並木の満開の下に』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

許されるか否か

 

 

桜並木の満開の下に

 

ダルデンヌ兄弟の『息子のまなざし』を連想させる被害者と加害者のドラマ。いち早くジャジャンクー作品を援助したオフィス北野制作だけあってドラマ的ではなく映画的なリアリズムで描かれている正統派。東日本大震災から復興しつつある海辺の工場が舞台な訳だが、この手の空気感で曇り空が多い海辺を描かれると北野繋がりで『あの夏いちばん静かな海』を連想してしまう。つまり甘ったるいドラマを期待しない方が良い。経営が傾いて絶望的な状況にある工場で悪あがきするギスギスとした空気感の中で話は進むのだ。頭が悪く暴力的な下層労働者や出稼ぎのアジア系移民。

 

寡黙な作品ではあるが、たまに口を開くといちいち適切な名言が飛び出す。その意味では実に台詞のセンスが良い脚本。極めて常識的なリアリズム故なのかもしれない。夫の事故死の原因となった男との間の許されない恋みたいな売り込み方をしているが、ここに描かれる関係は極めてプラトニック。それが逆に肉体を重ねてしまうよりもリアルに感じる。あるべき感情のやり取りはあくまでも"許されるか否か"だから。そこに恋心が生まれても罪の意識に阻まれるのだ。そのトラウマの深さを見せる映像的な描写力もかなり効果的で上手い。桜の開花に重ねた主人公の揺れる想いというメンタルな部分を描くには骨太過ぎる演出ではあるが、その生々しさは個人的に気に入りました。