映画『夏休みの地図』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

3.11と原爆

 

 

夏休みの地図

 

いわゆるご当地映画…と呼ぶには少々メージャー過ぎる都市ヒロシマ。かつてそこで『仁義なき戦い』を撮った深作欣二を継いで息子の健太が現在のヒロシマを捉える…というのは後付けの理屈で単に鴨さんの企画モノに乗っかっただけ。子供たちを中心に地元民の個性を引き出し、そこから脚本を構築するという半ドキュメントに近い作風。近々失われてしまうものを映像に残す事が目的だから物語から外れた部分もある。それは被爆証言。地図を作るという宿題の為の取材であってリポートを作る訳でもないのに少年は地元民の証言を集めて回るのだ。そして物語には東日本大震災についてもヒロシマの原爆からの復興に自分の街を重ねる転校生という形で強引に絡めてある。だから脚本としては実に散漫。企画としては面白いけど。

 

まあ『僕たちは世界を変えることができない。』にしても普段リティパニュが扱っているような歴史の再認識や社会問題を散漫に描き散らしたパンク感があっただけに、これが健太という映像作家の個性なのかもしれない。スタイルという父とは別の形で弾けている。脚本としてはとても褒められたものじゃないが作家としてのパンク精神(とにかくやってみる精神)は嫌いじゃないし、映画を作るスタイルとしても機材の進歩で手軽に映画が撮れるようになった現代ならではの合理性があって軽快。構成を周到に作り込む事も大切だけど対象から弾け出すバイタリティを捉える事は実写ならではの強み。これを活かす事こそがドキュメント的手法を劇映画に取り入れる理想の形に思えるのです。インプロヴィゼーションを最大限に引き出す是枝さんや諏訪さんのようなスタイルに健太氏も足を踏み入れたかって感じです。