映画『SWEET×SWEET』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

君は"Poo'sWorks"を知っているか?

 

 

SWEET×SWEET


2005年のディレクターズマガジンに富永昌敬監督や廣末哲万監督と並んで筧昌也監督が注目の若手監督として紹介されていた。『スクラップ』の入賞後、製作会社に就職したと聞いて私と同様に業界の隅に埋没したと思い込んでいたが自主制作も続けていたようです。彼の噂を聞かなくなって6年。知らない間に『美女缶』で商業映画デビューを果たしていた。インタビュー記事を読んでいると、彼と初めて会った時の事を懐かしく思い出しました。

 

学生時代、金欠になると私はよく様々な無料上映会を巡っていた。日大の学園祭で上映会をやっていた"Poo'sWorks"の上映会に顔を出したのもそんな趣味故の友人の紹介があったから。上映作品の半数以上は筧氏の作品だった。高校時代に撮った松本大洋の『リボルバー』を原作にした作品に始まり、実習作品らしき数本の短編実験作品と、長回しに挑んだ意欲的なモノクロ作品『SUIT』と、この当時は監督自身の自信作だったこの作品が同時上映された。早くから独学で自主制作を始めた監督に特有の技術的手探り感を持ちつつも娯楽としての筋を外れない作品の数々にシンパシーを感じた。というのは私自身も高校時代から独学で8ミリフィルムやHi8を回し始めたので、今平学校入学時には既に様々な方法を実践済みで同級生に対し「本当に映画が作りたいなら、何故今まで作らなかったんだ?」という意識があったからだった。本当に作りたい奴は、手取り足取り教えてくれるのを待ったりしない。ぼけっと受動的に講師におんぶに抱っこで教えてもらう同級生を尻目に、実習をサボって画家崩れの仲間と自主制作に打ち込み、発表会で佐藤忠男氏にその作品を見せたりしていた。このアドバンテージを考えると、私も筧氏も学生時代の入賞経験は当然の成り行きだった。とりあえず自分がやりたい事に早く気づいてストイックに打ち込んだ分抜きに出ただけだ。会場はアットホームな雰囲気で筧監督もその場にいたが、私自身とはあまり言葉を交さず私の友人と気が合った様子だった。その後卒業まで彼の近況はこの友人を介して伝わった。

 

この物語はシェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を基盤にして、とある女子高生をコミカルに描いた青春コメディです。冒頭、80年代的な時代背景を匂わせる為だけに唯一著作権料をかけたチェッカーズの"あの娘とスキャンダル"が流れ、本棚を使った工夫に満ちたタイトルが現れる。学校の支度を終えた主人公がカメラに向かって「OK」我々の世代の日大作品にはこの種のコメディが多い。『東京アワー』『GUNS''N''ROSES』解り易い例をあげるなら矢口監督の様な作風です。矢口作品は多摩美出身にしては娯楽性がしっかりしているという印象だが、筧作品は日大生にしては冒険しているという印象でした。同世代でかつて同じ土俵にいた筧監督は、もう次のステップへ進みつつある。私も重い腰をあげなければと焦るが怠け癖がついてしまったようだ。