映画『致命少女姫』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

後ろ髪ヒクヒク

 

 

致命少女姫

 

未来世界で超能力者同士が戦うサイキックアクション。この作品の主な登場人物は車椅子の少女と赤毛の少年。同じ未来世界の貧民窟に暮らすが少女は医師の祖母に養われる一般人で少年の方は地元を仕切るギャングの若頭。一見、何の接点もないように見える二人だが、どちらも幼い頃に同じ施設で超能力実験のモルモットにされ生き残った僅かな子供たちの残党。普段は隠している超能力でいざとなると圧倒的な戦闘力を発揮する。この赤毛の少年は組織の側から超能力者の残党狩りを命令されてる訳だが、それと同時に施設脱出の際に自分を助けてくれた少女を個人的に探してる。この設定自体はなかなか人間臭くて嫌いじゃない。そして彼女に辿り着きサイキックバトルで一旦は捻じ伏せて拉致し組織に引き渡す訳だが、そこで彼女は予想もしていなかった更なる力に覚醒する。そんな訳で単純なバトル展開に戻る訳だが、この少女はやはり赤紙の少年が探していた幼馴染だったようで彼女も覚えていたようだが過去に特別な感情は抱いていないようです。それが何とも切ない。この悪役である赤髪の少年に感情移入して見ていたものだからフラれた気分になりました。ただラストショットで彼女の後ろ髪が不自然にヒクヒク動いてるのが少しばかりの未練のように感じられるのが救いです。

 

それにしても彼女を拉致する際の赤毛の少年は派手に暴れてはいるが、それなりに手加減してる印象だったのに対して覚醒した後のヒロインは全く容赦なしで片っ端から悪役を殺しまくり赤紙の少年も全身の骨が砕けるまで徹底的にボコす。この展開はあまりに悲し過ぎ。むしろ赤紙の少年にもう少し勇気があれば組織に反旗を翻してヒロインと共に逃げるなんてラブストーリー的な展開もあり得ただろうに。だが彼は結局組織から逃げ切れなかった側の人間だったのだ。これって全体主義の没個性に埋没する組織人の悲哀という現代人には他人事ではないテーマ性を感じます。それも保身の為に悪党の側に付いていたら旗色が悪くなったのに逃げられないみたいな理不尽。現在の親米ジャップがマクロでは正にそんな感じだが、ミクロで見れば東側であってもあらゆる組織にそんな局面はあるのだろう。その船は共に沈むに値しない。だが船の中しか知らない人間はそれが見えない。もし幼い頃の彼が彼女と一緒に一度でも外の世界に逃げられていたら組織に属していても彼の決断も変わっただろうに。なるべく我々も西側という偏狭な妄想をマスメディアで垂れ流してる共同幻想の外側を見て生きましょう。