映画『プリズナーズ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

リンチ親父

 

 

プリズナーズ

 

この失踪した子供の親は間違いなくモンスターペアレンツ予備軍。子供の事となると見境をなくし失踪現場に車を停めていたってだけで知的障害者を犯人扱いして壮絶な拉致拷問。結果的にこの父親の直感は完全に間違いではなかったにせよ、あまりに浅慮過ぎる。イスラエルにも『オオカミは嘘をつく』って拷問映画があったけど、これは疑われてボコられるのが障害者だけに、かなりの胸糞です。まあ独善拷問親父は、それ相応の報いを受けるオランダ映画『ヴァニシング』風味の展開があるので、それなりには気が晴れる訳だが。とある住宅街で起きた幼い娘たちの失踪事件。担当刑事が慎重に捜査を進めるが、その娘の父親は捜査のノウハウすら知らずに疑った人物を私刑にする。これはほとんど捜査妨害ってレベル。アホな刑事ドラマばかり見てるとマッチョな刑事が犯人ボコボコにして捕まえるみたいな偏見が植え付けられるが実際の捜査って普通は徹底して相手に警戒されないよう細心の注意を払って事情聴取します。まあ本作の刑事も強引な所はあって焦りから大失敗をやらかしたりもする訳だが、どちらにせよ本当に優秀な刑事って奴は世間話のノリで重要情報を聞き出すものです。

 

それにしても今作は撮影が割とベテランで今作での成功以降はヴィルヌーヴ作品の常連になったようだが、この作品で初めて組んだからなのかヴィルヌーヴ作品では最も絵が陳腐です。いつもの乾いた感じのダイナミックな引き絵がなくて典型的なハリウッドのサスペンスドラマのショット構成になっちゃっています。その意味ではヴィルヌーヴ作品で最も魅力を感じられない。ただ内容的に毒があるって意味ではグイグイ引き込まれて退屈させません。とにかく日本でも頻発してるクレイジークレーマー問題って奴も元々は米国産の価値観が生んだ人間の劣化なのだろうと、この父親の行動パターンを見ていると分かります。まあ民度が低い国って奴は幼稚な大人が多くて刑事の追及を誤魔化す詭弁にしても過度に説明的で普通の大人ならガキの云い訳レベルに一瞬で見抜けます。まだ私が子供の頃の日本にはかろうじて普通の大人が残っていたが現在の日本や米国を見ると修身を失ったクズの末路を見てるようです。その意味で「これが一般的な米国人の道徳的退廃の惨状だ」と云わんばかりの毒舌を感じます。ただただ金儲けだけを目的とした米国的価値観って奴は人間から倫理と知性を奪いエゴイズムの怪物に変えるのです。