映画『メッセージ』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

記憶は武器

 

 

メッセージ

 

未見だったヴィルヌーヴ作品を連続で拝見。今作は彼の作品の中でも特に有名な部類に入る訳だがテンポが遅く娯楽度的にはあまり高くありません。スピルバーグの『未知との遭遇』に代表されるような異星人とのコンタクト系。異星人というより未確認知的生命体って所だろうか。この生命体は『複製された男』に登場する雲のような造形で、そもそもこれを知的生命体であると何故判断できたのかすら謎な怪物感があります。この飛行物体が宇宙船だとしても乗っているのは意思を持たない家畜かもしれないだろうに。この飛行物体は実に象徴的な造形で異邦人というより保護者を匂わせます。つまり宇宙人ってより神様との対話。全く攻撃的な所がない飛行物体に人類は怯え混乱し暴動まで起こる。そんな幼稚な人類を静かに見守るような存在の飛行物体。主人公は女性言語学者で知的生命体と対話する翻訳係を軍から依頼される。そこで彼女が行った対話方法は効率的計算に基いてはいるが実に原始的。互いにジェスチャーのように行動を見せながら互いの文字を覚えるというコミュニケーション。まあ古今東西、最初に言語を覚えようとすれば他に方法はないのだろう。

 

ヒロインのモノローグで物語は始まりテレンスマリック作品のような記憶の羅列を見せながら思い出す記憶は時系列ではないみたいな話をする訳だが、これは別に観念論ではなく彼女に知的生命体が授けたチート能力。彼女は未来の記憶を見れる。その能力を使い異星人との争いを回避して他国間の争いの予防にも貢献する。この知的生命体は地球上12ヶ所に姿を現して人類に技術を授けるが、それは12ヶ所全てを合わせなければ効果がないらしい。その贈り物により異星人側は人類に調和を齎そうとする訳だが逆に分断を煽ろうとしてると解釈されたりもします。これは典型的な弱者の過剰反応。技術面で遅れた地球人は優れた知的生命体への恐怖にすぐ吹き上がる。クズはクズでない人間の存在に耐え切れないのです。それはプーチン氏に対して幼稚な妄想を抱き吹き上がるクソジャップにも似ています。この知的生命体は自分を攻撃する人類に対して、ただ静かに手を差し伸べる。これって正に神の慈愛を思わせます。どんなに寛容な異星人でも「こいつは救いようがないクズだから、もう知らん」と見捨てるか滅ぼすかしそうなものだが。それだけに人類はまだまだ幼稚なのだと実感させられます。