愛情しぐさ
大室家 dear sisters
百合系ギャグ漫画として名高い『ゆるゆり』のスピンオフ。いつもの4人組はほとんど登場せずサブレギュラー櫻子の家庭を中心に描いた姉妹の日常系コメディ。この櫻子という今回の主役は割と残念キャラなのだが三人姉妹の真ん中で姉と妹は優秀で色々と助けられてる感じなのだが、いざとなったら家族思いな主人公も姉や妹を助ける。つまりはさり気ない家族愛にホッコリする系のギャグアニメなのだ。この作品も相変わらずダメ人間キャラの珍騒動で笑わせてくれる訳だが、今回ちょっと気になったのは割とオーバーにキャラのしぐさが作り込まれてるって所。基本的にジャパニメーションってのは手塚プロに始まるコスパを極限まで抑えた動かないアニメの伝統の中にある訳だが、そんな中でもスタジオジブリ等の一部の意識高い制作会社では日本人のしぐさに拘った動かし方で多くの名作を生んでいます。そんな名作のモーションを無駄に真似したかのようなショットがやたらと多い。これが最初は違和感な訳だが、クライマックスの見せ方で納得してしまった。なるほど普段は喧嘩ばかりしてる三人姉妹の愛情の面を台詞じゃない形で見せようとするとハグするまでの距離感を匂わせるモーションの変化が必要って訳か。
かつて『きみはいい子』という文部科学省特選映画には号泣させられた訳だが、それに近い意図を今作のクライマックスには感じさせられました。ここ最近、日本の恋愛映画に誠実性を感じられずゲイムービーの方がよっぽどストイックに純愛を描けていると感じているが"シトラス"とか"やがて君になる"とかの傑作アニメを見るに家族愛すらも百合アニメの方が心揺さぶる表現ができています。それは多分、男女の恋愛には定型があり、そこにハマってラブラブな恋人を演じる事で第三者にリア充アピールをして承認されたいという浅ましい感情で恋人モドキを作るという作法が世間に溢れ過ぎているからだろう。その場合、基本的に相手自身への感情はどうしても薄味になる。それこそ世間体や常識を超えてでも「君じゃなきゃダメなんだ」が本当の恋愛でしょう。そんな実直さがなければどんなにリア充演じても孤独にしかなりません。あくまで世間体の為に女友達を連れ歩く事は私もやるが、それは恋愛とは別。互いに自分のイタさを晒し合える関係でなけりゃ愛も情もない。あくまでもゆるく半分笑いに変えながらであっても、この姉妹には愛情を感じさせられました。
