映画『暗殺者たちの流儀』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

老眼スナイパー
 

 

暗殺者たちの流儀


ポーランドの殺し屋ものノワール映画。冒頭はイラク戦争から始まりリアル路線を期待させたが、そうでもない内容であった事で逆に楽しめました。それこそリュックベッソンとかマルコヴィカリオとかの少しオシャレなクライムサスペンスを連想させます。イラク戦争での民間人誤射をマスメディアで叩かれた事で生き甲斐だった軍隊をクビになったスナイパー。そんな彼の腕を買ったのは国に雇われたベテランの殺し屋。服役を終えたばかりで引退を考えていたが半ば強引に警察庁長官暗殺計画に引きずり込まれた哀れな老人だが標的を狙撃しようにも、どうも年のせいで目が悪くなり遠方狙撃が不可能になってしまったので軍をクビになったばかりの狙撃のプロに目を付けた。もし作戦が成功すれば軍隊に戻れるかもしれないと若き狙撃兵は暗殺計画に協力する。それなりに用心深い2人だが、それでも想定外の事は起こる。ホテルでDV男から助けた娼婦に恋をしたりクライアントが金を出し渋ったり。そんな2人のトラブルが一昔前のギャング映画のような洒落たテイストで語られています。

 

この老いたベテラン殺し屋の主張には殺し屋に育てた若者が高校銃乱射事件を起こしてしまうというマシューカソヴィッツの傑作『アサシンズ』を連想させられます。こいつは日本に例えるなら任侠ヤクザって奴で仲間との絆や信頼関係を重視しています。だから若い狙撃手を失業に追いやったクソ記者は仲間の敵としてブチ殺す。この感覚が微妙に現代社会とズレて来てしまっているって所が何とも寂しい。ただ本作は何とも皮肉な終わり方をしているが最後に「ああ、なんだかんだ云ってお爺ちゃんもギャング仲間内じゃ人望あったんじゃん」と昔ながらの絆を感じてしまいます。この点からしても腐った現代社会VS昔ながらの任侠って対立構図のテーマが明快です。それに巻き込まれた若き狙撃手はベテラン殺し屋が口にした通り何とも可哀相な訳だが。この若者と娼婦の会話を見ているだけでベテラン殺し屋が語った現代の世知辛さが滲み出ています。この若者は彼女と特別な関係が築けるかもしれないという淡い期待を持っているようだが、そんな彼の誘いに対する彼女の返答はどれも、あくまでもビジネスライク。ただの客。相手の為に体を張って守っても特別な関係が築けない。ロマンなき人間関係とでも云うべき価値観で人間がクズ化してしまっているのは何処の国でも変わらないようです。