映画『淵に立つ』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

淵に立つ

 

 

オチ無しミステリー

 

因縁の男が戻って来て家族を壊すパターンは昔から数え切れない程あって我々の世代でも『重力ピエロ』や西川美和の初期作品とかの鋭い秀作から『月光ノ仮面』みたいなトンデモ系アングラまで数え始めたらきりがない程に定番パターン。この作品では過去に殺人で捕まり共犯者の名を明かさず一人で罪をかぶった男が出所して共犯者の元を訪ねる所から話が始まる。この共犯者は結婚して幸せな家庭を築いているが罪の意識から彼を家族に招き入れた事から悲劇が始まる。この独善的な元殺人犯を浅野が演じてる訳だが、むしろ不気味さを強調するなら板尾あたりが演じた方がピッタリ来そうだ。その男に壊される事で暴かれてゆく家族の欺瞞って所が作り手側の狙いに思えるが、それにしても中途半端。男の中の闇が曖昧で家族ドラマとしても中ぶらり。リアリズム系の演出をしていて登場人物が皆ゴニョゴニョと声を張らない喋り方をしている上にガヤのデジベルが高くシーンによってはわざと台詞を聞かせない演出をしているのかと思わされる所すらある。それらの聞き取り辛い台詞の中にも決定的に第二の事件の真相を炙り出すような情報はない。そこに関しては大した問題ではないとでも云いたげな内容ではあるが、そこが気にならなくなる程インパクトがある品質の人間ドラマではなかった。ただ単に種明かしのないミステリーを見せられた感覚。