映画『道端の花』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

カースト社会が悪魔を作る
 

 

道端の花


カースト差別批判といえばインドでは最近だけでもシンハーの『アーティクル15』とか『ダマカ』とか古くはラージカプールの傑作『放浪者』に至るまで数限りなく作られてる訳だが、この問題はお隣ネパールでも深刻なようです。ネパール映画とは珍しいが内容の方は一昔前のC級ボリウッド映画って感じです。どうも日本資本も入ってるようだが「素人に撮らせたんじゃないか?」と疑いたくなる品質です。それなりに泣かせてくれる話だが明らかに第一線ボリウッド映画(ヒンズー語)に比べると撮影編集が下手糞だし第一線カルカッタ映画(ベンガル語)に比べると脚本演出に文学的深みも構成の巧みさもありません。バラモン階級(坊さんの家系)の娘がヒロインでダリット階級(不可触民=えった非人の家系)が主人公。物語は主人公が恋人殺しで連行される所から始まり、なぜ彼が恋人であるヒロインを殺してしまったのかという話を時系列に回想。主人公の身近な人間がギョーカイ人に強姦されたり自殺に追い込まれたりとダリットの迫害を目の当たりにしてダリットである自分が恋人であるバラモン階層のヒロインと結婚してしまうと彼女を不幸にしてしまうと身を引く。その気持ちを知ったヒロインの恋心は尚更に燃え上がり結婚を決めようとするが、やはり世間は甘くなかった。

 

まあ分かり易く迫害の実態を並べながら悲恋のドラマにまとめてる訳だが気のせいか背後から頭の悪いパヨク臭がしてしまいます。それこそ原発利権を扱った『朝日のあたる家』とか典型的な反戦駄作『おかあさんの木』みたいに主張がエコーチェンバー起こしちゃってる内輪ウケ自己満足系。確かに世襲の合理性というメリット以上に階級社会が撒き散らす害悪は大きい。この主人公を担当した刑事が懲罰感情で吹き上がるデモ隊にブチかました正論にはぐっと来ました。それこそカースト制がない日本でも昨今は明確に社会が階級化して社会的弱者が理不尽に虐げられて自力救済に走る若者が増えてます。この手の抵抗には強い共感を覚える。この手の弱者から抵抗権すら奪おうとするクソ大衆には激しい義憤を感じるからこそ刑事の主張には心を動かされた。テロを許さず一方的に虐げ続ける卑劣な連中こそブチ殺したい。ただ今作の真相はもっと間抜けていて「ダメじゃん」の一言です。そんな訳で安物ボリウッドミュージカルみたいにダラダラと楽しめる作品ではあったが色々な所で失敗してる感じです。