映画『湿地』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

奇病因子付き連続強姦魔
 

 

湿地


アイスランド版『重力ピエロ』って所だろうか。ただ今作は中途半端に刑事ものミステリーとしての比重が大きい。これは主人公である刑事と犯人それぞれ自分の娘に対する想いを対比させる意図があったのだろう。ただ結果的に構成としてミステリーとしても中途半端で因縁のドラマとしても中途半端な駄作になってしまっています。この刑事の娘はチンピラとつるみ父親の分からない子供を孕んで出戻ったダメ人間だが犯人の娘は遺伝性の奇病によってたった5歳で命を落としてしまった。どちらかといえばダメ人間でも生きていてくれた方が親孝行だとラストシーンで寄り添う姿が明確に物語っています。なぜ犯人の娘は負の因子を背負ってしまったのだろうかって所で半世紀前に起きた集団強姦事件に繋がる。この刑事が調査してる連続殺人の被害者はどいつも強姦事件の加害者だった。コロンボ的構成のせいでミステリーとしては早々に察しが付いてしまう内容でありながら強姦事件の因縁の家族ドラマとしても実に中途半端。何処となくポンジュノの『殺人の追憶』を思わせる退廃感で引き込もうとしてる感じではあるが自分的には刑事の娘との親子ドラマ以外に特に惹かれる所はありませんでした。

 

ただギミックとしてはタイトルにある通りアイスランド特有の風土感を上手く使っています。フリドリクソン作品群は勿論ながら最近じゃ『たちあがる女』等を見ても分る通りアイルランドの国土は生態系に特殊な苔や藻が発生する程に湿ってる所が多い。なんつっても国土の半分以上が冬は氷に閉ざされて立ち入り禁止になるレベルの極寒の地。雪解け水が凄まじいのでしょう。これをギミックとタイトルにした事でアイスランド産らしさだけは出ています。ただ『ミレニアム』シリーズをはじめとして今世紀に入ってから様々な良作ミステリーを生んでる北欧作品にしては陳腐過ぎました。どうせならミステリーではなく刑事と娘の確執と愛憎のドラマだけで作品にした方が面白くなりそうって感じです。むしろ奇病因子を含んだ子を産む犠牲者を増やし続ける強姦常習犯である犯人の父親とか胸糞要素しかない。とにかく半世紀前の強姦事件の被害者を探して老婆たちを訪ねて回る所とか犯人にブルってる刑事とか中途半端にコメディ的要素とかも入っていて色々とやろうとしてる中で本当に見せたい所がボヤけてる。あくまで私の主観で察するに親が子に対して抱く想いって所が中核にあります。