映画『ぼくらのよあけ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

つくば万博世代が夢見る宇宙
 

 

ぼくらのよあけ


アニメで団地と小学生という組み合わせに思わず同時期に公開された『雨を告げる漂流団地』を連想してしまった訳だが、こっちは一応、異世界ファンタジーではなく近未来SF。どちらにせよ団地育ちが多かった世代の実感がそれなりに込められてる感じです。この世代が子供の頃に経験したコミュニティの繋がりみたいなものが前提にある人間関係。今作の舞台は2049年って事だけど、この宇宙大好きな主人公は常に1985年の国際科学技術博覧会の記念帽子をかぶっています。かく云う私も幼少期に親に連れて行って貰った思い出があり宇宙技術開発に憧れを抱いた記憶が蘇りました。あの頃のワクワク感を今表現すると、こんな感じの作品になるのでしょう。それだけに色々と地に足がつかないままで終わってしまった印象はあります。ストーリーの大筋は遥か遠い星から来た知的生命体の宇宙船が地球の近くで座礁していて、それを故郷に返してあげる為に必要な水などのエネルギー資源を子供たちが集めるってなスピルバーグの『ET』大ヒット以降に子供向けコンテンツの王道になったタイプの典型です。そこに比重が行き過ぎている事で子供騙しになってる感は否めません。

 

この主人公の子供たちが通う小学校にも、それなりにスクールカーストがあって仲良し三人組のひとりの姉がいじめる側からいじめられる側に転落するってなドラマがあったりもします。この点が最も興味を惹かれた部分ではあったが特に進展はなく、その描き方も陳腐。仲間からハブられたり拒否られたりの表現としてエヴァ以降の世代はよくATフィールド的な表現を使います。その手の表現は特に京アニの山田尚子の傑作『聲の形』が特に心に刺さった訳だが今作の表現はイマイチ。ただヒエラルキーの同調圧力って奴に対して真っ向から反発してるヒロインと必死でポジション守ろうとしてる姉との対比は双方に共感できる所があります。まあ私は基本的にはヒロインと同じで「クズに評価されたいとは思わない」タイプなので空気を読まずに本当の事を口にしてしまうが彼女のように友人がいない環境には耐えられません。ただ姉が「お前らキモいから友達少ねんだよ」とマウントをとったシーンでは「いやいや信頼出来る奴が2~3人いれば充分でしょ」と突っ込んでしまった。キモいと互いに思われても平気な仲間を作れない奴はどんなに多くのクラスメートとつるんでいても友達がいないのと同じです。