映画『ミスミソウ』の感想 | アキラの映画感想日記

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映画を通した社会批判

ミスミソウ

 

 

イジメで家族を焼き殺す

 

 「♪東京トウキョと威張るなシンイチ、ワラを食わせりゃすぐ泣く癖に」ってのは藤子A先生原作の『少年時代』で地方の子供たちが都会から疎開して来た主人公をいじめる時の即興ソング。鈴木宗男のような故郷に利益誘導をしてくれる俗議員は吊し上げられ中央集権的な政治運営により拡大した中央と地方の格差を思えば都会出身者への妬み嫉みはこれ位のヘイト感情を生みそうなものだが、むしろ今作での過激ないじめは百合的な憧れと愛情故の嫉妬心に根ざしています。その感情が映画という箱の中で短絡的な殺し合いという形で具現化。学校内部のいじめが発端であっても、そこにあるのは大人社会にも共通するヒエラルキーや村八分の発想があり、そこで展開される報復ヴァイオレンスアクションは分り易い悪意に満ちていて逆に爽快。

 

かつてP1グランプリを受賞した『OLの愛液』の田尻氏がホラー映画デビューした『孕み』に期待したドロドロとした世界がここにはあった。いじめやヒエラルキーは力への服従だけでは生まれません。そこに鬱屈した憧れや敬意があるからこそ崇拝する対象に忖度して気に入られる為に過激な行動に出るのです。いじめの延長で両親と幼い妹を生きたまま丸焼きにする虐殺や報復の連続殺人は常軌を逸してるようにも見えて目を背けたくもなるが、そんな残虐行為に至り得る愛という感情は誰もが持っているのです。