映画『シス』の感想 | アキラの映画感想日記

アキラの映画感想日記

映画を通した社会批判

SISU/シス 不死身の男

 

 

お前は既に死んでいる

いわゆるエログロナチス系C級をリスペクトするタランティーノを真似たようなフィンランドのヒーロー映画。敗戦間近の時期に北方遠征してるナチスを強いおじいちゃんが千切っては投げ千切っては投げの世界。残酷グロ描写タップリのヴァイオレンスアクション。それだけでもバカ映画臭プンプンな訳だが、この作品に登場するナチスはまんま『マッドマックス』シリーズで暴れ回るモヒカンのヒャッハーな連中のノリ。マトモな映画で見るドイツ兵の面影は全くなくて荒野で略奪を繰り返す野党状態。現地の村を焼き払い男は吊るして女は性奴隷って感じで正に「ナチスならこれ位の事はやっただろうという素晴らしい歴史考察に基く」by映画秘宝って感じです。そんな野党状態のナチが祖国の敗北を予感して主人公が発掘した金塊を奪うべく次から次に襲って来る。これを人間業とも思えない強さでねじ伏せるおじいちゃん。この老人を演じているのが北村龍平の『ドアマン』でジャンレノと共に悪役を演じていたヘニーで彼は過去にもノルウェーでナチスをけちょんけちょんにする映画で有名になったらしい。

 

どちらにせよ今作のナチスの描き方のバカっぷりはタランティーノ映画を越えたって感じです。この主人公のおじいちゃんは一人でロシア軍を撃退した不死身の兵隊として誰もが恐れる存在だと道中でナチスは知らされる訳だが、この流れも実に不自然なご都合主義でこの手のC級ヒーロー映画のテーゼに無理やり持って行こうとしてる感じです。そんでもって性奴隷にされた女性たちの殺し文句は正にケンシロウ。お前は既に死んでいる。そんでもってキッチリあべしっひでぶって感じに惨殺してくれます。この女性たちも彼と一緒にナチスを片っ端からブチ殺しまくる訳だが後半になって来ると彼の恐ろしさを理解したのか彼が睨んだだけで若い兵士たちが武装解除して逃げていきます。この辺の表現も正に頭の悪いハリウッド映画と少年マンガにしか見かけないパターンです。とにかく徹底的に俺つえー系をやってる感じです。やはり自由民主主義のせいで米国や日本の国民は真っ先に根性腐ったクズに堕落した訳だが欧州もその後を追ってクズ化が始まってしまってるようです。いわゆる頭の悪いクソガキの妄想を体現するような類の作品はネタとして笑い飛ばす分には問題ないが、あまり大量に摂取すると人格が腐ります。この手のナルシストの妄想に媚びる系は他者への想像力を消失させるので気を付けましょう。